中国全土で、人権派弁護士など60人近くが逮捕され、半分ほどが解放されたものの、11日の時点で32人の行方が分かっていない。政府に批判的な人権活動家が逮捕されることはこれまでもあったが、今回の人数は最大規模だという。12日付各紙が報じた。

この背景には、政権批判の高まりがあると見られる。最近、中国では株価が暴落し、国内の個人投資家の不満が高まっている。中国の官製メディアが強気相場を報じる中で、借金して株を買ってきた個人投資家もおり、「政府にだまされた」という声も出ている。当局は株式相場への介入を行っているが、効果のほどは不明だ。

経済不安が高まる中で、7月1日には「国家安全法」が制定された。「海外勢力の浸透を防ぐ」などと定め、国内の治安を脅かすものとしてテロ行為だけでなく「言論の自由」も挙げ、密告を義務付けるなど、国内の締め付けを強めるものとなっている。

今回の弁護士拘束は、この流れと軌を一にしており、政権への批判を封じ込める狙いがあると思われる。しかし、こうした動きが明らかになれば、国民のさらなる批判を招くだろう。

日本の株も下落したことから、中国の株価暴落について、日本への経済的な影響を懸念する人もいるが、本欄はむしろ、安全保障上のリスクを警戒すべきだと考える。

弁護士の大規模な拘束は、中国国内の不満が危険水準にあることを意味している。国内で富を作り出すことで批判を抑えられない場合、今後は、国外への侵略行為に向かう可能性が高い。

パラセル諸島沖で9日には、中国船の体当たりを受けたベトナム漁船が沈没するなど、その兆候はすでに見られる。

不満を力で抑えつける中国のやり方は限界を迎えている。日本を含む関係諸国は、中国政府に対し、国民の自由を認め、民主主義的な国になるように促すべきだ。一方で日本は、中国の暴発の矛先を向けられぬよう、十分な抑止力を備える必要がある。(居)

【関連記事】

2015年7月号記事 日米vs.中国「新冷戦」の始まり - 2023年習近平が世界を支配する - 日本がとるべき3つの国家戦略 Part.1

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9670

2015年7月8日付本欄 中国株暴落で日本のGDP75%分の富が消失 元凶は共産党そのもの

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9875

2013年10月9日付本欄 中国で「人権弁護団」結成 異例の体制反発 日本政府も声を上げよ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6752