【大学不認可問題】下村文科相による霊言本への「出版妨害」こそ不正行為だった

2014.11.12

学校法人幸福の科学学園は11月11日、下村博文・文部科学相による幸福の科学大学の不認可処分について異議申し立ての補足を行った。これによれば、下村氏自身が審議中の今年6月6日、大川隆法総裁の著作に対して「出版差し止め圧力」をかけていた事実が明らかとなった。

現職の大臣による「出版妨害」は無論、「言論・出版の自由」の侵害であり、違憲行為である。下村氏は、10月31日に出した幸福の科学大学の「不認可の理由」の中で、大学側に不正行為があったと指摘していたが、「出版妨害」こそ重大な不正行為といえる。さらに、幸福の科学大学への取材で、下村氏による「出版妨害」の働きかけは2度に渡っているうえ、審議会における議論にも極めて杜撰な経緯があったことが判明した。

「出版差し止め」と「大学認可」をバーター

下村氏が出した「不認可の理由」の中には、次のような不正行為があったとの指摘がなされている。

6月に「A氏」(注:下村氏の出した通知文書中では実名だが、プライバシーを考慮して、以下「A氏」と表記)と名乗る人物から文科相宛てに「下村博文守護霊の霊言パート2」の要約が書簡として送られており、これが設置認可の可否を判断するに際して心的圧力となって、公正な審議が妨害されたという趣旨だ。

今回の異議申し立てによると、実はこれに先立つ6月6日、下村氏本人からA氏の携帯に留守番電話が入っていた。A氏が折り返すと、下村氏は次のように言ってきたという。

「本をストップすることで、やりようはまだある。まだ、間に合うから。役人が(霊言書籍の原稿の)コピーを持ってきた(中略)。本部のしかるべき人に話をしてくれないか。本のストップは当然のことだ。幸福の科学大学の学部名も、本来なら認可が出ないところ、OKを出そうとしていた(中略)。今だったら対応の仕方がある」

下村氏から直接の電話連絡を受けたA氏は、その内容を即日、宗教法人に連絡したが、翌7日、『下村博文文科相の守護霊インタビュー』が発刊された。現職の閣僚から突然、自分に電話連絡が入れば、誰であっても圧力を感じて動揺するだろう。内容が上記のような抗議であればなおさらだ。

現職の閣僚が出版の差し止めを要求することは、「言論・出版の自由」の侵害であり、さらに下村氏はこの電話の中で、出版差し止めと幸福の科学大学の認可をバーターとして提示している。設置の可否は、審議会で議論した結果を受けて「公人」であるはずの文科相が最終的に判断するものであり、申請者に対して文科相が直接に取引を持ちかけるのは「不正行為」そのものである。

また、A氏と下村氏は、以前より面識のある関係である。2012年5月に開かれた教育関係の会合で名刺交換をし、A氏はその後3回ほど、下村後援会の集いに参加していた。「A氏と名乗る人物」と表記されるような、赤の他人ではない。

その後、続編となる「文部科学大臣・下村博文守護霊インタビュー2」と題する霊言が収録された。その要約文書を入手したA氏が、下村氏の携帯に「急ぎ、お届けしたいものがある」とメールを入れたところ、下村大臣から「了解しました」との返信が来た。そこで、A氏は6月17日、下村氏の事務所を訪れ、霊言の要約文書を秘書に手渡した。下村氏が出した「不認可の理由」には、「送られた」とあるが、実際には下村大臣本人が承知したうえで、秘書に手渡されたものである。

下村氏はこの行為を、「心的圧力をかける不正行為」と断じているが、そもそもA氏は幸福実現党に勤務しており、学校法人・幸福の科学学園とは関係ない。下村氏と個人的に面識があるだけで、大学設置の審議に関しては明らかな第三者である。この経緯をもって、幸福の科学大学による不正行為と判定して、不認可の根拠とするのは乱暴なこじつけであり、予断に過ぎる。

宗教を所管する大臣が「出版妨害」「伝道禁止」圧力

驚くべきことに、下村氏が「出版妨害」を働きかけた相手は面識のあるA氏一人ではなかった。

下村大臣は6月6日、衆議院第一議員会館で開かれた会合に来賓出席。この会合に幸福の科学の信者で都内在住のB氏も参加し、下村氏と他の民主党議員などに大川総裁の著作を手渡そうとした。

その際、下村氏は初対面のB氏に対して、次のように発言した。

「『下村博文の霊言』という書籍が出るということを秘書から聞いた(中略)。こんな本を出すのは、宗教として問題ではないのか。私は別に、幸福の科学大学の設立に反対しているのではない。幹部の方に伝えておいてほしい」

下村氏はこの場でも、幸福の科学大学の設立を引き合いに出して、教団側に出版差し止めを求める趣旨の発言をしている。憲法に明記されている「言論・出版の自由」について、一体どのような理解をしているのか、その見識を疑わざるを得ない。

また、10月29日に幸福の科学大学の設置を「不可」とした審議会の答申にも、審査過程に幸福の科学大学側に不適切な行為があったと指摘されている。具体的には、創立者である大川総裁の大学関連の書籍が数多く出版されたこと、幸福の科学グループから審議会の委員に書籍が送付されたこと、関係者の守護霊本が複数出版されたことなどを挙げている。

書籍の発刊自体が不適切な行為に当たるという見解は、「信教の自由」「言論・出版の自由」を貶める重大な違憲判断である。そして、教祖の著書を渡すことはれっきとした宗教行為、伝道行為であり、「信教の自由」のもとに憲法で保障されているものだ。今回の答申は、行政に申請中の信仰者に対して「伝道禁止」を言い渡したようなものである。

大学関係者ではないA氏が、霊言要約の書簡を事務所に届けたことを「不正行為」と断じた下村大臣の判断にも、同様の批判がなされるべきである。

これらは民主主義の根幹を揺るがすような不当な判断であるが、特に問題なのが、下村氏が全国の宗教法人を所管する文部科学省の閣僚であるということだ。

先般、松島みどり元法相が辞任したが、争点となったのは、法務相の立場で「公職選挙法」に違反したことだった。法律全般を所管する立場の閣僚本人が、法律違反をしていたからこそ、その責任を問われたわけだ。下村氏も同様に、宗教法人を所管するトップでありながら、宗教法人に対して「出版妨害」を働きかけ、伝道行為を著しく委縮させる見解を出したことは看過できない。

「審査ルール無視」が横行する審議会

「霊言には科学的実証性がない」などの理由で幸福の科学大学の設置を「不可」とし、さらに、大学側に「不適切な行為」があったと指摘してきた審議会にも、本来のルールを踏み破った不正行為があったことが判明している。

審議会の審査には公正さが厳しく求められるという名目から、申請者が提出した申請書をもとに、「書面、面接、実地により行う」と定められている。しかし、文科省で10月31日に行われた不認可理由の伝達の場において、文科省大学設置室の責任者である室長が次のような趣旨の発言をしたという。

「下村大臣の霊言が出ているが、本人の意図とは違うことが書かれていることを踏まえれば、論理的なものだといえるのか、おかしいのではないか、という議論が審議会の中であった」

「幸福の科学のHP等では霊言自体が非常にレベルが高いことであるとされており、霊言ができるとされているのは大川総裁だけなのかと思った」

だが、下村氏守護霊の霊言はもちろん、霊言書籍そのものが一つも申請書類には明記されていない。申請書類以外の資料をもとに議論し、それを根拠に可否を判断したのは明らかに審査ルールに反している。

「霊言ができるのは大川総裁一人」という理解も、HPの情報から判断したとは審議ルール違反を通り越して、あまりにお粗末だ。実際には霊言を行なえるスピリチュアル・エキスパート(いわゆるチャネラー)は複数存在し、10月31日には、6人のスピリチュアル・エキスパートに順番に下村大臣の守護霊を入れて霊言を行っている。

また、室長は「是正意見に対して幸福の科学大学は補正してクリアしてきたけれども、最終的に根幹の部分(霊言)がクリアできなかった」とも発言したという。

「是正意見」が一つしか残らなかった場合、その時点で「不可」とするのではなく、「審査継続」として修正を求められることが通例である。幸福の科学大学に残った「是正意見」は、霊言に関する項目のみだったにも関わらず、「不可」答申が出されたことは差別的行為である。

さらに、審査ルールとして、1回目に出した「是正意見」よりも、より根本的な「是正意見」はそれ以後、出してはならないという内部規定がある。しかし、大学側は3月に申請書を提出してから、2度に渡って審議会から「是正意見」が付けられ、補正した書類を提出してきたが、霊言についてはこれまで一度も指摘がなかった。

最後の最後になって、大学設置室の室長自らが「根幹の部分」と認める霊言について、突然に「是正意見」が出されたことは、審議会側の不正行為であり、もはや詐欺と言わざるを得ない。しかも、話し合いの場すら設けなかったことは、審議会の正当性の根拠である「公正に議論」「慎重に議論」に真っ向から反するものである。

『下村博文文科相の守護霊インタビュー(2)』が発刊されたのは8月14日。審議会が霊言を急に持ち出したのはその後だ。下村氏は、宗教を所管する文部科学大臣であるにも関わらず、宗教法人に対して場所も相手も選ばずに、「出版差し止め」と大学認可のバーター取引を2度に渡って働きかけ、「不認可通知」の中で堂々と布教を不正行為と断ずる人物だ。

審議会は一般に、閣僚が責任逃れをするための「隠れ蓑」と揶揄される。その審議会が、これほどのルール違反を犯してまで霊言をやり玉に挙げ、幸福の科学大学を「不可」にした背景には、一体どのような考えが働いていたのか明らかにすべきだろう。

自分の守護霊霊言を否定するための職権乱用か

下村氏は「不認可の理由」の中で、霊言の実証性や信用性を否定するために、新聞広告の社会的機能にまで踏み込んでいる。大川総裁の霊言書籍の広告は、大手新聞にこれまで数多く掲載されており、社会的に一定の信用を得ていることは明らかである。実際、各新聞社は広告を掲載する前に、それが社会的に受容されるかどうかを厳正に考査しており、日本新聞協会が定める「新聞広告倫理綱領」にもその旨が記されている。

しかし、下村氏は「不認可の理由」の中で、「新聞広告にそのような機能はない」と完全否定している。

ある意味、正直と言うべきだろうか。約5カ月に及ぶ下村氏の言動は、霊言の正当性、信憑性を否定する方向性で一貫している。自らの守護霊霊言を否定したいあまり、「出版妨害」に始まる一連の不正行為、「信教の自由」「言論の自由」の弾圧を行ったという見方は、決して飛躍したものではないだろう。

下村氏の「不認可の理由」では、幸福の科学大学に「不正行為」があったとされ、その経緯が6月14日(A氏の証言では17日)から記載されている。しかし、事実は6月6日、下村氏による「出版妨害」と大学認可のバーター取引から「不正行為」は始まっている。その事実を隠ぺいしようとする意図が、下村氏の不認可通知文書から見て取れる。不正を働いたのは下村氏自身であり、文科省の審議会であることが明らかになった。

下村文科相には、今回の異議申し立ての補足に対して、宗教法人や道徳教育を所管する文部科学省のトップとして、嘘偽らざる説明を求めたい。

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2014年11月7日付本欄 【速報】設立不認可の「幸福の科学大学」が、文科相に異議申立 「不認可の撤回と、改めて認可を求める」

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