タイのクーデターはなぜ起きたのか!? 日本はタイの「民主主義化」を助けよ

2014.05.24

タイの民主主義がまた中断された。

タイ軍が22日、クーデターを決行した。憲法は停止され、タイ全土に夜間外出禁止令が出された。軍は現政権の活動拠点を制圧し、現場からは銃声も聞こえたという。国内のテレビやラジオ放送も停止され、軍の最高実力者プラユット司令官が「軍と警察による『国家平和維持評議会』が国の統治を担う必要がある」と演説する様子が流れた。

軍がタイ政治を占拠したのは、前与党の「タイ貢献党」と、前野党の「民主党」の対立が泥沼化したためだ。

前与党の「タイ貢献党」はいわゆる「タクシン派」と言われる。タクシンとは2001年からタイ首相を務めた政治家。それまで政治を牛耳ってきた財界や官僚の既得権益を切り崩し、地方の農民のために産業育成やインフラ投資を行うことを約束。国民多数の農村部の支持を得て、選挙で圧勝した。

しかし、「民主党」を中心とする旧権力側は彼に反発。既得権益が崩れるのみならず、選挙で選ばれた強力な政治家の存在は、タイ王室の権威や権力を弱めかねないからだ。反対派はタクシン氏を「バラマキ」「ポピュリズム」と主張し、大規模な反政府デモを行った。それに対して軍が2006年、「対立回避」などを名目にクーデターを起こし、タクシン氏は失脚。国外逃亡を余儀なくされた。

しかし、「タイ貢献党」は2011年に再び選挙に勝ち、タクシン氏の妹であるインラック氏が首相に就任。野党は再び反政府デモを大規模に展開した。政情が混乱する中、インラック氏は今月7日に、憲法裁判所から政府高官の人事に関して違憲判決を受けて失職。反タクシン派とのつながりが濃い、司法関係者に、政争の一環として引きずり下ろされた形だ。

それに対し、今度はタクシン派の怒りが爆発。両勢力が衝突し、タイの治安は最悪となった。そこで軍部が、「対立の抑制」「治安維持」を名目に起こしたのが、今回のクーデターだった。メディアの中には、今回の軍の介入で治安が回復されることを評価する声もある。

しかし、問題を複雑にしているのは「軍も旧権力寄り」という事実だ。軍部の総帥は国王ということになっており、官僚や財界と同じく既得権益側にある。また、国際的な常識では、民主的に選ばれた政府を暴力的なデモで転覆させる勢力は、警察か軍が放っておかないはず。政府と反政府を「仲裁」するような軍の存在は中立とは言えない。

こうしたクーデターはタイでは過去21回も起きている。ある政党が選挙で勝っても、反対勢力が過激に反対運動を展開すれば、「治安維持」と称したクーデターで政権を倒せる。これでは民主主義国とは言えない。

タイ情勢が本当に安定するのには時間がかかりそうだ。旧政権側は民主主義の意味を理解し、投票する側も、タイを繁栄させる政治家を選ぶ見識を身に着ける必要がある。タイは「真の民主主義」への移行期間にある。

日本としては、タイの「民主主義化」を最大限に支援する必要がある。教育支援や企業誘致などを通して民衆啓蒙に貢献し、「天皇制と民主主義を両立する」という手本も示さなければならない。そして何よりも、タイが政情不安につけこまれ、中国に乗っ取られるようなことがないように、目を光らせる必要がある。(光)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『守護霊インタビュー タイ・インラック首相から日本へのメッセージ』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1089

【関連記事】

2014年4月号記事 タイの政治的混乱はなぜ起こっているの? - そもそも解説 3分で分かる「世界の政治・経済のなぜ」

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7422

2014年5月8日付本欄 インラック首相が失職 憲法裁判所が違憲判決 タイの民主主義を成熟させる方法は?

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7806

2014年1月20日付本欄 混迷の渦中にあるタイ・インラック首相の本心 親日国タイの重要性

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7235


タグ:

「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
「ザ・リバティWeb」協賛金のご案内

YouTubeチャンネル「未来編集」最新動画



記事ランキング

ランキング一覧はこちら