財務省が、景気回復による税収増を発表 消費増税の逆効果がはっきりしてきた

2013.11.03

財務省が1日発表した税収実績によると、今年度の税収が当初予算よりも1~3兆円の増加になる見通しだ。税収増の主な理由は、景気回復で企業の業績が上向いたことによる、法人税増加である。

2日付日経新聞は、「経済と財政の好循環」で、消費増税に伴う今年度の補正予算で新たな国債を発行せずに済む」という評価の仕方をしている。つまり、「景気回復で税収が増えたので、消費税による景気悪化を防ぐための予算が得られた」というのだ。消費税増税を推進してきた日経新聞なので、今さら言いにくいかもしれないが、「それならばそもそも消費税を上げなければいい」という反応が自然ではないか。

残念ながら、この自然増収の効果も、来年春に消費税が8%となればゼロ、いやマイナスとなるだろう。今回、景気と連動することが再確認された法人税を中心に、税収が落ち込む。まさに、「経済と財政の悪循環」になってしまう。

やはり、景気回復・経済成長による国民の幸福と、それに伴う税収の増加をこそ目指すべきだ。税収増の見込みがあるものの、景気回復はまだまだ道半ば。消費は本格的に回復しておらず、9月時点での消費者物価指数も、輸出燃料費の値上がりの影響を除けば、前年比でほとんどゼロの状況だ。さらなる景気回復の余地は大きく、様々な経済対策がうまく噛み合えば、今回の1~3兆円よりもさらに大きく税収が伸びる。

さらには、経済成長すればするほど、税収の増え方は加速することもわかっている。今までのデータを見ると、名目GDPの伸び方が1%のとき、税収の伸び方は7%になるなど、経済成長率の変動をはるかに上回る「振れ幅」で、税収増加率が変動している。経済成長が加速することで、今回よりも大きな税収増が見込めるということだ。

一方、消費増税による税収増は、あまり期待できない。消費税率が1%上がると、消費税での税収は2兆円を増える、という試算がよく使われる。しかし、この試算は楽観的だという批判が強い。「消費増税」を実現するために水増しされている可能性が高いのだ。消費税が3%上がれば、その税収分は最も多くて6兆円といったところだろう。

そこに、景気後退による他の税収減が加われば、さらに少なくなる。結果的にトータルの税収がマイナスになったのが、1997年に行われた5%への消費税増税だ。「税収」一つとっても、消費増税が誤った選択であることが明らかだ。

しかし、最も重要なのは国民の幸福である。今回の、自然増収は国民が豊かになった「結果」の税収だ。一方、消費増税による税収は国民の「犠牲」による税収だ。経済学の祖アダム・スミスは『国富論』において、税金をかけてよいのは、元手を使って経済活動をした結果、生み出された果実についてだと言っている。消費税を上げて経済を阻害するのではなく、国民の利益や所得が上がった結果としての税収を目指すべきなのだ。

政府は、来年の増税で「経済・財政の悪循環」を見る前に、「消費税で財政再建」という理論が誤った経済学であることを悟らなければならない。(光)

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2013年10月10日付本欄 大丸松坂屋が1000人削減 早くも消費増税が効きはじめた

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6761

2013年10月2日付本欄 安倍首相8%へ消費増税を決断 ニッポン沈没の引き金を引いた?

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