政府が3%の賃上げを要請 必要なのは「介入」ではなく、トランプのような「減税」

2018.01.25

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《本記事のポイント》

  • 政府は企業への賃上げ要請を強めている
  • トランプ氏は減税で自然と賃上げを達成した
  • 企業に介入するのではなく、発展を促してこそ、賃上げも達成できる

政府が企業への賃上げ要請を強めている。

労働組合が企業側に賃上げ要求などを行う「春闘交渉」に先立ち、安倍晋三首相は経済団体に対して、「社会的要請」として3%の賃上げを求めた。昨年10月の経済財政諮問会議でも、「3%の賃上げが実現するよう期待したい」としている。

達成した企業には、税制優遇として法人税を引き下げるとしており、何としても賃上げを実行させたい考えだ。

しかし、政府が賃上げを強制することで、企業生命を縮める恐れがある。

企業から絞り取る方針の日本政府

賃上げによって固定費が上がれば、企業はその他のコストを削らなければならない。収支を合わせるために、新規事業の投資や研究開発費などが削られることも。しかし、発展の基となる投資・研究を削ってしまえば、企業の将来が危うくなる。

ハッピー・サイエンス・ユニバーシティの経営成功学部ディーンを務める鈴木真実哉氏は、昨年10月の本欄取材に、「『賃上げ』というのは、10年後の企業生命と引き換えに行われているだけなんです。それだけ、将来潰れる企業、あるいは成長の止まる企業が増えてしまいます」と述べた。

政府が介入して賃上げを強制することで、一時的には社員の収入が上がるかもしれない。しかし、賃上げによるコスト圧迫が企業の倒産を招けば、社員は働き口を失い、賃上げ以前の問題となる。官制賃上げは、消費増税による購買意欲の低下や、原材料の値上がりに苦しむ企業に追い打ちをかけてしまう。

さらに、「教育無償化」も企業を襲っている。

昨年11月、政府は「教育無償化」の財源のうち3千億円を民間企業からの「事業主拠出金」の増額で賄うと決定した。日本経済団体連合会会長の榊原定征氏がこれに賛同を示したものの、産業界としては何の前触れもない要請で、特に中小企業の負担が大きいと指摘されている。

こうした、企業から絞り取るだけ絞り取るという日本政府のやり方は、いずれ破綻する。

自然に賃上げが起きているアメリカ

日本政府と対照的な方法で賃上げを達成したのが、ドナルド・トランプ米大統領だ。

トランプ氏の大減税から1カ月も経たずして、少なくとも187の会社が「減税の結果」として、ボーナスの支給や賃金の引き上げ、投資計画、もしくは慈善事業への寄付を表明している。企業への負荷を減らした結果、自然と賃上げが起こった事例だ。

日本政府は、人工的に賃上げを引き起こそうと躍起になっているが、トランプ氏の事例を見習って、介入を減らすべきだろう。どうすれば日本企業が発展するかを考え、施策を打ってこそ、結果的に賃金の上昇につながる。パーセンテージを示してまで企業の給与体制に口を出すなど、政府のすべき仕事ではない。

(片岡眞有子)

【関連記事】

2017年10月2日付本欄 アベノミクスの「賃金アップ」は「給料の前借り」――鈴木真実哉氏に聞く(2)

https://the-liberty.com/article/13589/

2017年9月27日付本欄 「減税こそ、最大の福祉」ってどういうこと!?【手取り足取り衆院選】

https://the-liberty.com/article/13566/


タグ: 安倍晋三  トランプ  減税  賃上げ  春闘  教育無償化  コスト 

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