宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、H2Aロケット23号機を種子島宇宙センター(鹿児島県)から打上げることに成功した。これにより、打上げ成功率は95.6%に高まった。

今回のH2Aロケットには、南極と北極を除く地球上のほとんどの地域で雨を高精度に観測する国際プロジェクト「全球降水観測計画(GPM)」の主衛星が搭載された。GPM主衛星は日本のJAXAと米航空宇宙局(NASA)が共同開発したもの。運用が開始されれば、欧州やインドなど各国の人工衛星と連携して、3時間おきに地球上の約9割の地域の雨の状況を詳しく把握できるようになるという。

これまでのGPM計画においては、1997年に打上げられた日米共同開発の熱帯降雨観測衛星(TRMM)があるが、これで観測できたのは、熱帯や亜熱帯地域での、スコールのような強い雨に留まっていた。

今回打上げに成功したGPM主衛星には、JAXAが開発した世界初の「2周波降水レーダー(DPR)」が搭載されており、これまでよりも弱い雨や雪の分布なども調べることができる。同じく搭載されているNASAが開発した「マイクロ波撮像装置(GMI)」は、雲の中に溜まっている雨量や、地表に降り注ぐ雨量を調べることができる。「ひまわり」などこれまでの気象衛星では、雲の形を上から見ることしかできなかったが、GPM主衛星によって、台風などの雲の中の様子をCTスキャンするように立体的に調べることができるようになる。

これによって、詳細な天気予報ができるようになることはもちろん、降雨情報を調べる地上の観測所が充実していない発展途上国などでも、洪水を予測できるようになることなどが期待されている。2011年にタイで起きた大洪水が記憶に新しいが、被害が拡大した原因の一つに、山間部に観測所が少なかったため、チャオプラヤ川の流量を把握しきれなかったことがあった。

GPM主衛星は2カ月後に本格的に運用を開始し、6カ月後から気象情報を提供する。

正確な気象情報は、世界的に増えている台風や洪水、大雪などから人々の生命・安全・財産を守るために、ますます重要性を増している。これまでもこの分野の技術をリードしてきた日米だが、今後のさらなる連携と技術の発展にも期待したい。(居)

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