日本のGPS技術が世界一になる。31日付日本経済新聞によると、三菱電機とNEC、宇宙航空研究開発機構(JAXA)らは位置測定技術を共同開発し、測定誤差を1センチメートル以下と、これまでのおよそ1万分の1にまで下げられるという。

GPSとは、衛星を利用した全地球測位システム(Global Positioning System)のこと。上空に滞在しているGPS衛星のうち、最低4つから情報を受け取って、自分の位置を特定する。

アメリカは地球上すべての地域をカバーできる数のGPS衛星を運用しており、1996年には「GPSを直接課金することなく全世界に開放する」と発表した。そのため、日本はこれまで、主にアメリカのGPS衛星を利用してきた。

ただ、GPS衛星は常に移動しており、アメリカの衛星は日本に特化しているものではないため、木に囲まれたり、高層ビルなどに囲まれる場所では、上空の衛星の数が足らずに自分の位置が分からなくなることがある。

その不便さを解消するために計画されたのが今回の次世代衛星、日本版GPS「準天頂衛星」だ。この日本版GPS衛星が、常時1機は日本上空にあるようにするため、3機以上を打ち上げるという。この計画は1月にまとめられた政府の成長戦略の一つにも入っている。

この日本版GPS衛星の情報を補助的に用いれば、測定誤差を1メートル以下にできる。そうなればGPSを利用するサービスが普及し、経済効果も期待できる。

今回の発表の目玉はそれだけではなく、この測定誤差をさらに1センチメートルにまで下げられるメドがついたことだ。日本はアメリカ本土に比べ、正確な位置特定に障害となる、上空の空気の層である電離層の変動が大きい。この電離層による誤差を補正する装置を三菱電機が開発できたため、誤差を限りなく小さくするメドがついたという。2018年には国内で民間利用が始まる。

これほどGPSの精度が上がれば、まず、カーナビの精度が上がる。また、自動で走行する無人車や農業用の無人トラクター、道路の渋滞を解決するように信号をコントロールするなど、応用できる分野がどんどん広がり、新しい産業も生まれるだろう。

また、この日本版GPS衛星はアジア・オセアニア上空も飛ぶため、地上設備などを整えさえすれば、これらの地域でも利用できる。高度なGPSサービスを提供できるのであれば、日本からのインフラの輸出にも大きな強みになる。政府は新興国を中心に売り込むというが、大いに期待したい。(居)

【関連記事】

2013年1月27日付本欄 宇宙産業を新たな基幹産業に 政府主導で投資を拡大せよ

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5541

2011年9月14日付本欄 「ロボット農場」の時代は近い GPSで無人トラクター

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2851