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アルゼンチンのミレイ大統領がこのほど、スイスで行われた世界経済フォーラムの第54回年次総会(ダボス会議)で講演を行いました。

リバタリアン(自由至上主義)として知られるミレイ氏の講演については、「規制や補助金の導入によって自由主義経済が損なわれ『欧米は危機に瀕している』と持論を展開した」(18日付日経新聞電子版)、「『自由企業による資本主義こそが飢餓と貧困を終わらせる唯一の手段である』と持論を訴えた」(18日付ロイター通信)などと報じられています。

《詳細》

アルゼンチンは現在、貧困率が40%を超え、インフレ率も200%に達するなど経済的危機の最中にあります。ダボス会議への出席は、ミレイ氏が昨年12月に大統領に就任して以降、初めての外遊となりました。

講演でミレイ氏は、かつて豊かだったアルゼンチンが100年前、企業の国有化を進めるなど、国家が生産手段を計画・統制する集産主義を取るようになって貧困が進んだことを指摘。「どんなに豊かでも、天然資源があっても、熟練した国民がいても、教育を受けた国民がいても、中央銀行の金庫にいくら金塊があっても関係がない」としました。

一方、世界を見ると、1800年には人口の95%近くが貧困にあえいでいたものの、産業革命により世界の一人当たり国内総生産(GDP)は15倍以上になり、貧困率は2020年には5%にまで減少したことを指摘。「経済システムとしての自由市場資本主義こそが、地球上の飢餓と貧困を終わらせる唯一の手段である」と訴えました。

ところが現代においては、「西側の価値観を守るべき人々が、社会主義、ひいては貧困につながる世界観に取り込まれてしまっている」と警告。「国家が個人の生活のあらゆる側面を指揮すべき」という考えのもと、税負担を増やして補助金をばら撒いたり、通貨発行、国債の発行、金利や価格の統制などによって、国家権力がますます増大し、社会主義が進み、貧困が増え、その結果、生活水準は低下すると指摘しました。

ミレイ氏は、自由経済において市場が機能しているならば、「良い品質の製品を魅力的な価格で生産すれば、その企業は業績を上げ、さらに多くの製品を生産する」ことで新しい富が生み出されることを指摘。市場とは「資本家が正しい方向を見つけながら進んでいく発見のプロセス」であって、国家が資本家の成功に罰を与えれば富は小さくなり、社会全体に不利益をもたらすとしました。

講演では「経済的自由、制限された政府、私有財産の無制限の尊重は、経済成長に不可欠な要素」であると繰り返し訴え、企業家に対しては「あなたたちは社会の恩人です。英雄なのです」「あなた方がお金を稼ぐなら、あなた方がより良い製品をより良い価格で提供し、それによって福祉に貢献するから」であると鼓舞しました。

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