《本記事のポイント》

  • 中露関係は緊密化していくのか?
  • 台湾危機は連動するのか?
  • 日本の対露制裁が危機を招く

元航空自衛官

河田 成治

河田 成治
プロフィール
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。

前編(https://the-liberty.com/article/19314/)では、バイデン米大統領の対露強硬策が、歴史を振り返るとなぜ愚策になるのかについて、お話ししてきました。後編では、気になる中国との関係で何が起きるかについて説明していきたいと思います。

最も恐れるべきは、ロシアと中国が軍事同盟を結ぶことです。従来のロシアの対中観は、「象の隣で寝るようなもの」というものでした。巨象になった中国の力は必要だが、かといって象が妙な具合に寝返りを打つとこちらも潰されかねない、という認識です。したがってロシアは、「中国と適度な距離を置きつつも友好関係を続ける」というスタンスでした。

つまり、これまでの露中は軍事同盟として結束する可能性は低いと見られていたのです。軍事同盟は戦争になれば互いに参戦する義務が発生しかねません。ロシアは中国が狙っている台湾、南シナ海、東シナ海などの方面に大きな国益を感じていませんが、軍事同盟を結ぶと、この方面の戦争に巻き込まれる恐れがあります。中国はいずれ軍事侵攻に踏み切る可能性があるので、ロシアはそうした同盟リスクを取りたくないでしょう。一方、ロシアの主戦場はウクライナなどの欧州ですから、この方面の戦争に中国は巻き込まれたくないだろうと推定されます。

ですから、これまでの両国の軍事提携は、「あくまでも政治的な意味でのアメリカなどへの"牽制"」、言いかえれば、国際政治でのプレゼンス(存在感)を示すためのものであって、実際の共同軍事行動を追求したものではなかった、というのが見立てです。

大川隆法・幸福の科学総裁が2月下旬、プーチン露大統領の守護霊霊言を行ったところ、プーチン氏の守護霊は、中国との関係について、「『敵の敵は味方』っていう考えぐらいのレベルなんだよ。(中略)全然仲は良くないんだけど、敵が出てくるなら、敵の敵は味方にしなきゃいけない」と述べ、同じ船に乗り合わせることになってしまった「呉越同舟」のような関係だと語っていました(『ウクライナ侵攻とプーチン大統領の本心』所収)。

緊密化せざるを得ない中露関係

しかしこのウクライナ紛争によって、欧米および日本は、ロシアと明確な敵対関係になりました。そのため、ロシアと中国の決定的な軍事的連携につながる恐れが強まっています。

ロシアは東アジアではオホーツク海を聖域として、核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を遊弋(ゆうよく)させています。もしアメリカと戦争になれば、アメリカの核攻撃を抑止する最大の切り札が、この核原潜だからです。したがって米露の対立が深まるほど、ロシアにとってオホーツク海の死守は、極めて重要な戦略目標となるのです。

3月10日、ロシアはオホーツク海の入口である北方領土でミサイル訓練を行ったと発表しましたが、これは明らかにアメリカとの戦争を意識したものでしょう。

プーチン氏の守護霊は、「両方もし欧米から攻めてくるんだったら、それは手伝わなきゃいけない状態にはなるわなあ」と述べています。つまり欧州方面での対立の激化は、台湾などへ中国が侵攻を開始したとき、露中が共同歩調を取る可能性を高めてしまったのです。

この意味で、バイデン政権の対露政策は愚の骨頂です。ロシアを煽ってウクライナ危機を高め、結果的にロシアを不可逆的に中国側に追いやる大罪を犯しました。そして中国を利する外交的大敗北を招いたのです。

大川総裁は、前掲書の「あとがき」で「『トップの決断力』は今後の世界の流れを変える。バイデン氏は、対コロナ戦に続いて、二つ目の敗戦だ。残念だが頭が悪すぎた」と指摘しています。

台湾危機は連動するのか?-(1)今すぐではない可能性-

ただ短期的に見れば、中国の本格的な台湾侵攻にはやや時間がかかると予測します。その理由は中国の台湾侵攻の準備が整っていない可能性があることです。

中国軍の台湾上陸能力については、台湾国防部は、2019年に上陸用の艦艇などが不十分であることを根拠に「現段階では大規模に上陸作戦を実施する能力を完全には備えてない」と報告したことに引き続き、21年も、いまだそれら能力は不十分だとして、「中国の直接侵攻はまだ準備が整っていない」と分析しています。ただし上陸作戦力を加速度的に向上させていると、警戒感を顕わにしています。

アメリカの報告書では、中国の台湾上陸能力は、現在2万5000人程度と見積もられていますが、私は台湾攻略には30万人規模が必要だと推測しています。その理由は、防御側は地形を利用して防備を固めることができるので、攻撃側に通常3倍の戦力が必要だからです。

ただし、海軍輸送艦の数がそろっていないことで油断すべきではありません。

中国は大量の兵員を送り込むために、大型の強襲揚陸艦075型の建造を急ピッチで進めています。同艦は揚陸艇や水陸両用車両を搭載しており、台湾や沖縄などへの上陸作戦に力を発揮します。075型は海上自衛隊の「いずも型」を上回り、米海軍のワスプ級強襲揚陸艦に匹敵するようです。現在3隻が進水していますが、中国軍事当局は、最終的に7隻またはそれ以上を配備すると表明しています。

さらに中国は、軍艦に加えて、制空権と制海権を奪った後に、海上保安庁にあたる海警局や民間フェリー、漁船を利用して上陸部隊を送り込むと予想されます。したがって上陸能力はさらに大きい可能性があります。

現時点での上陸能力には疑問符がつくものの、状況次第では予想よりはるかに早期に台湾侵攻が始まる可能性は排除できません。

台湾危機は連動するのか?-(2)中国に自信を持たせた可能性-

しかし中期的にみれば、むしろ台湾への武力侵攻の可能性は高まりました。その理由は、ウクライナ侵攻に対して、バイデン政権は経済制裁とウクライナへの間接的支援に終始しており、ロシアとの直接対決を恐れて軍事的介入に腰が引けていることを世界中に知らしめてしまったからです。

中国の習近平国家主席は、「バイデン氏が大統領の間なら、台湾に侵攻しても軍事的介入を躊躇するに違いない」と侮ったのではないでしょうか。

台湾島嶼部への軍事行動はすぐにでも起き得る

喫緊の危機は、ロシアに気を取られる欧米の隙を突いて、中国が台湾島嶼部の馬祖(ばそ)・金門、東沙諸島などを狙うことです。もしバイデン氏が対応できなければ、アメリカの国際的な力は地に落ちるでしょう。かつ中国国内では、今秋の習氏の国家主席3期目に向けての大きな地盤固めになるでしょう。

したがって、ここ数カ月間、中国が何らかの象徴的な軍事行動を起こすことには十分な警戒が必要です。

すでに中国海軍の戦力は、東アジアに展開可能な米海軍の戦力を凌駕しつつあります。そのため、台湾防衛にあたっては米軍と自衛隊が協力したとしても、甚大な損害が出ることが予想されます。

また1982年、アルゼンチン軍がフォークランド諸島に侵攻した際、これを奪還しようとするイギリスに対し、同盟国であるアメリカは軍事支援ではなく、外交的な調停によって解決を図ろうとした前例があります。

このような事情からも、台湾島嶼部への侵攻に対しては、バイデン政権は台湾政府の支援要請に乗り出す確率はむしろ低いと言わざるを得ません。

台湾の島嶼部は極めて、危険な状態にあると考えます。

日本は対露制裁のリスクを考慮せよ

まとめると次の3点が重要になってくるでしょう。

(1)ウクライナをEUに加盟させるべきではない

大川総裁は前掲書のあとがきで、「ウクライナはEU(欧州連合)へ入れるべきではない」と述べています。ウクライナをEUに加盟させて親欧米国として固定してしまえば、ロシアは永遠に欧米の敵国となり、東欧正面が対立の最前線として常に武力紛争の危機が付きまとうことになります。そしてロシアは中国と関係を強化する以外に生き残る道がなくなります。

(2)バイデン政権はロシアと一刻も早い和解、仲介を

最善の道は、バイデン政権がロシア敵対政策をやめ、一刻も早く停戦と和解への道を開くことです。このままでは数百万人のウクライナ難民が発生し、欧州も苦しみます。また長期的な敵対状態が続けば、その間、中国はアジア拡張の"フリーハンド"を得てしまい、アメリカはアジア方面で中国に大きな敗退を喫する危険性が高まります。

またウクライナのゼレンスキー大統領は、国是を「中立」に転換し、EUやNATO加盟方針を撤回すべきです。

(3)日露が敵対関係に入ることで失うリスクを考慮せよ

露中軍事同盟が成立してしまった場合、日本は日米同盟に頼った国家防衛ができず、国家存亡の危機を迎えるでしょう。日本の有事の際、アメリカは、中国に加えロシアまで敵に回してまで日本防衛のために軍隊を投入するでしょうか。

したがって日本は、欧米にならって対露制裁を続けるべきではありません。日露関係は決して敵対的になってはいけないのです。

併せて、ドイツが国防費を大幅に増大させ、GDP比の2%以上に引き上げると発表したように、日本も思い切った防衛政策の大転換が必要です。ただちに最低でも対GDP比3%にすべきです。

バイデン氏は対コロナに続いて、2つ目の敗戦を喫しています。中国を利してしまったことで、このままでは中国の囲い込みができなくなり、中国の覇権拡大を止めることが不可能になります。

真なる敵はロシアではなく、背後でほくそ笑む中国であることを日本と欧米がはっきりと認識しなくては、世界は本当に危機を迎えると考えます。

HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回のウクライナ情勢などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ )。

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いずれも幸福の科学出版 大川隆法著

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