《本記事のポイント》

  • 膨らむ借金、萎む経済
  • 中国をぐらつかせる3つの要素──水害、食糧危機、党内闘争
  • 中国の強気姿勢の裏にある、危うい内実

中国共産党にとって、2021年は結党100周年に当たる。覇権拡大を加速させ、記念碑となるような成果を得ようと躍起になっているはずだ。しかし実際のところ、同党の内情は2020年以上に厳しいものとなるだろう。


膨らむ借金、萎む経済

中国国内の経済を見れば、すでに破綻していると言っても過言ではない。中央政府の財政赤字は、少なく見積もっても国内総生産(GDP)の300%を超える。

周知の如く、習近平政権は「一帯一路」政策で、各国にチャイナマネーをばら撒いた。だが20年、武漢発「新型コロナウィルス」の影響で、世界中が不況に陥った。そのため、貸し付けた国々からの返済が滞っている。

こうした負債・不良債権を穴埋めできるほど、実体経済が成長しているかというと、それも絶望的である。

2012年11月に習近平・国家主席が登場して以来、中国経済(投資・消費)は右肩下がりである。低迷する最大の原因は、習近平政権が資本主義をやめ、社会主義へ逆戻りしたことだろう。

1978年12月、トウ小平が「改革・開放」政策を打ち出して以降、中国は順調に経済発展を遂げた。ところが習主席は、毛沢東主席を真似て、社会主義的政策を採るようになった。そのため、これまでの「民進国退」(民間企業が伸張し、国有企業が後退)がいつしか「国進民退」(国有企業が伸張し、民間企業が後退)にとって代わる、という現象が起きている。

特に、2013年11月に導入された「混合所有制」は大問題だ。活きのいい民間企業と潰れそうな国有企業、ないしはゾンビ化した国有企業を無理やり併合した。当然、活きのいい民間企業の活力は失われるだろう。

同時に中国共産党は、政治思想優先の「第2文革」を始めた。人民はたとえ「習近平思想」を学んでも、ビジネスにはほとんど役に立たない。

そうした中、中国共産党は庶民からの搾取をしている。

2010年代前半、「株価はこれから上昇する」と庶民を煽った。しかし、実体経済が伴わず、株バブルが起きた。そして2015年6月、バブルが弾け、株が大暴落した。その時、約9000万人が損失を蒙ったという。

その後、中国共産党は「P2P」というインターネットを通じた小口金融会社の立ち上げを許可した。多くの社長は、党に近い人物である。庶民から出資を募ったが、現在、大半の会社は倒産している。

これらは好景気演出のための、事実上の搾取と言えるのではないか。

また中国共産党は2018年、有名女優、范冰冰(ファン・ビンビン)を見せしめにし、芸能人からも(裏契約の違法な)カネを徴収した。

それでも共産党は財政的に苦しいので、現在、アリババのような優良民間企業からもカネを上納させている。これでは、他の民間企業もやる気を失うだろう。

以上のような施策を採っていては、中国の成長は望めない。共産党は財政破綻まっしぐらとなり、人々からの不満も爆発寸前となる。経済不安は、政権を揺るがす一大要素となろう。


中国をぐらつかせる3つの要素──水害、食糧危機、党内闘争

近い将来、経済以外の面で中国共産党が崩壊するとしたら、どのような形で瓦解するのだろうか。考えられるシナリオは以下の通りである。

第1には、湖北省の三峡ダム決壊だ。同ダムは1、2年前から湾曲、及び防護石の陥没が確認されている。ダムが決壊すれば、貯水池の水が巨大な津波となり、上海まで達するだろう。

その津波で、武漢より下流の都市とその周辺部が水没すれば、損害は計り知れない。長江流域は中国のGDPの40%を占めるが、それが、突如、消失するのである。これでは、中国共産党政権はもたない。

第2に、目下、中国では「新型コロナ」、水害(三峡ダムを死守するため、政府はその上下流のダムを決壊させている)、蝗害等による食糧不足が生じている。同国は2020年、インドから10万トンのコメを輸入したことが、それを物語っている。そのため、各地で暴動が起きる公算が大きい。

今のところ、多くの中国人が「民主化」を求めて立ち上がる、という事はない。だが、食べられなくなるとなれば、民衆は蜂起するだろう。中国共産党がいかに立派なデジタル専制体制を敷いても、腹を空かした大衆を抑えるのは難しい。

第3に、共産党内部で「習近平派」と「反習近平派」が熾烈な党内闘争を行っている。習主席へのクーデターが起こり、その後、5大戦区の人民解放軍同士が戦火を交える。これによって、北京政府は分裂・崩壊するかもしれない。

仮に2021年、中国が強気の姿勢を打ち出してきたとしても、その奥には不安定な内実があることを念頭に置いておくべきだろう。

アジア太平洋交流学会会長

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

 

 


【関連記事】

2020年12月28日付本欄 米大統領選、共和党有力者にも中国の息がかかった人物がいる【澁谷司──中国包囲網の現在地】

https://the-liberty.com/article/17943/