北海道の山中で行方不明になり、6日後に発見・保護された田野岡大和くんの事件は、日本中に教育論議を巻き起こした。

行方不明になって以降、日本全国のメディアが大きく取り上げ、米CNNや英BBCでも報道された。BBCでは日本の「しつけ論争」と題して、良い子育てと悪い子育ての違いなど、教育のあり方について日本中が議論した1週間だったと報じた。

父親を責める人、自分の子供時代を思い出して共感する人……

尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏は、「悪いしつけの見本です。子供が納得していないのに、恐怖や痛みを与え、従わせるのは悪いしつけ。良いしつけとは、なぜいけないのか、どうしてあいさつが大切なのか…。意味や理由を分からせながら教えていくことです」とブログで主張し、父親の行動を「悪いしつけ」と批判した。

北海道中央児童相談所の阿部俊一・地域支援課長は、こう話している。「怒りや恐怖で縛るような置き去り行為は適切でない」と指摘し、「良いことと悪いことを繰り返し話して理解させ、心の成長を促し、時間がかかっても自ら是正するように考えさせるべきだ」(6日付毎日新聞ネット版)。

どちらも正論だが、こんな意見もあった。

小説の書評集などを出版している、フリーライターの豊崎由美氏はツイッターで、こうツイートした。「落ち着きがなく、聞き分けが悪く、癇が強い幼児・子供だったわたしは、しつけのためにと山の中に息子をほんの少し置き去りにした父親のことを思うと、いたたまれない気持ちになってしまう」「あの父親を責めないであげてほしいと思う」。

大和くんの父親が、息子が行方不明になってしまうリスクを甘く見ていたことは確かだし、結果的には大事件になってしまった。しかしそれだけで、息子が行方不明になって一番つらい思いをしている父親に対して、「悪いしつけ」と批判するのも酷だろう。

犯罪を疑うようなニュアンスで批判していた尾木氏は、後に謝罪している。

しつけなのか、虐待なのか

今回の事件で議論されたのは、「しつけなのか、虐待なのか」という点だ。父親が山林に置き去りにしたことは、「虐待」にあたるという意見もあった。しかし、「しつけ」と「虐待」の境目を明確にすることは難しい。

ただ、言えるのは、子供の持っている素晴らしい部分、良い個性を伸ばす方向に向かっているかどうかを問わなければいけないということだ。

人間は永遠の生命を持っており、生まれ変わりを繰り返している存在だ。物質的に見れば、子供は親がつくった所有物のようにも見えるが、親とは別の独立した魂が宿っており、一人の立派な個性である。親と子は、あの世で親子になる約束をし、「互いの人生を素晴らしいものにしていこう」と話し合って生まれてきている。

大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『じょうずな個性の伸ばし方』で、こう述べている。「 魂が別である以上、子どもは、親が思った通りには必ずしもならない。子どもの魂が素直に伸びていく方向、子どもの魂の要請する方向に伸ばしてやるのが最もよいだろうと思っています 」。

子供が、親とは独立した魂を持つ尊い存在であるという事実を知ることは、極端な暴力などの虐待の抑制につながるだろう。

「人が嫌がることをしてはいけない」「ルールを守る」などの善悪を教えながら、その子の個性が求める方向に、伸び伸びと育てるにはどうすればよいか。それこそ親と子の個性によって違い、正解はないが、これを考え続けることが「良いしつけ」につながっていくのではないか。(朗)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『じょうずな個性の伸ばし方 お母さんの子育てバイブル』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=6

幸福の科学出版 『あげママの条件 子供を上手に育てる8つの「考え方」』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1527

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