今年は約4年に一度の教科書採択の年にあたる。6月から7月初旬までの間、各都道府県の教科書センターなどで検定教科書が公開され、意見が集められた。この教科書展示会には、今後教育現場で使われる教科書が並び、どれを採択するかについて国民が意見を述べることのできる貴重な機会だ。

ところが、この教科書展示会は歴史認識をめぐる思想対立の場になっているようだ。

神奈川県に住む40代男性によれば、最寄りの展示会場でアンケートを記入していたら、手書きのチラシを渡されたという。

チラシの内容は、「先の大戦は自衛戦争であり、アジア諸国の独立に役立った」と述べている育鵬社版の歴史教科書を採択させてはいけないと主張するものだった。さらには「育鵬社の本は戦後の軍国少年の現代版」など、偏った考え方に基づく解釈が述べられていた。男性は、「さまざまな意見を聞く場において、偏った意見のチラシが配られてよいのか」と疑問を呈する。

育鵬社の歴史教科書の記述は史実に照らして正当なものだが、そもそも歴史教科書をめぐって、採択すべき教科書とそうでないものがあるという議論がなされていることがおかしいのではないか。このような議論が起こる原因としては、政府として先の戦争に対する正しい見方を出していないこと、世界では当たり前の「愛国心を持った子供を育てる」という教育方針がないことも挙げられるだろう。

さらに問題なのは、歴史教科書の内容が出版社によって大きく異なっていることだ。これでは、義務教育において、選ばれた教科書によって学ぶ内容や身につく見識が左右されることになる。

そもそも教科書検定は、教育水準の維持、機会均等、適切な教育内容を維持することを目的としている(文部科学省HPより)。そうであるならば、ある教科書で学ぶと日本に誇りがもてるようになり、別の教科書では日本に対して自虐的な子供が育つようになる検定のあり方は、「教育水準の維持」「機会の均等」に既に反していると言える。さらに言えば、日本を貶めるような内容に偏り、日本を評価する声に触れないものは「適切な教育内容」ではないだろう。

多様な意見を尊重することはもちろん重要だが、義務教育で学習する内容はある程度の統一性は必要ではないか。教育は「真理の探究」の場であり、国を愛する心を育む目的もある。そうした目的から外れ、中立性を欠いた教科書を採択の選択肢に入れる必要はない。教科書検定のあり方を今一度考えたい。(瑛)

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