《ニュース》

台湾の頼清徳政権が成立を目指していた、対中抑止力を強化するための防衛特別予算案に対し、親中派の野党からの反対が相次ぎ、予算を3分の2に大幅減額した野党案が可決されました。台湾の国防強化に遅れが生じる見込みです。

《詳細》

少数与党である民進党の頼政権は昨年11月、国防強化のために、8年間で計1兆2500台湾ドル(約6兆2500億円)を計上する防衛特別予算案を立法院(国会)に提出していました。これに対し親中派の野党・国民党などが、総額7800億台湾ドル(約3兆9000億円)へと大幅に減額した案を提出し、今年5月8日に可決されました。政府案から4割近くが減額されたことで、台湾企業から20万機以上のドローンを購入するなどの国防強化策が白紙になりました。

政府案は、2033年までにアメリカから高機動ロケット砲システム「ハイマース」82基や対戦車ミサイル「ジャベリン」1050発を購入する計画に加え、台湾国内でのアメリカとの共同開発や、台湾の国産兵器の自主開発強化も含まれているなど、米台関係を新たな次元に深化させるものとして注目を集めていました。トランプ米政権は繰り返し、「迅速に承認する必要がある」と呼び掛けてきました。同政権は昨年12月、過去最大規模となる総額111億ドル(約1兆7000億円)相当の台湾への武器売却を承認し、さらに追加の売却も計画しているとされています。

しかし、野党によって予算が大幅削減されてしまった結果、ハイマースなどの購入は認められたものの、その他のアメリカ製兵器の売却(約1000億台湾ドル)や台湾国内での共同開発(約2500億台湾ドル)などへの資金供給が排除されました。そのため、頼政権が目指す「ドローン生産の中国抜きのサプライチェーン」や、新たな防空システム「台湾の盾」の構築に大きな支障が出ると懸念されています。

アメリカ側と予算案を練り込んだ与党・民進党は、「これは単なる予算削減ではない。台湾の包括的な防衛体制の削減、自衛への決意を世界に示す宣言の後退」だと批判。米国務省も「非建設的な遅れを経て、台湾で特別国防予算が可決されたことは心強いが、残る能力を確保するためのさらなる遅れは、中国共産党への譲歩だ」と非難しています。

与党は今後、予算案をいったん成立させた上で、予算の積み増しを図ると見られていますが、野党が議会の多数を占めるため、計画の遅延は避けられない状況です。

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