アメリカ海軍などが資金提供して開催された無人ボートの技術を競う大会に、東京大学など三大学の工学部学生チームが、資金援助を受けて参加していたことを、3日付東京新聞が一面で大々的に報じた。米軍の関与を認識しつつ、学生の参加を黙認した東大を批判的に見ているが、トップ記事で騒ぐほどの問題があるのか。

同紙によると、東京大学、東京工業大学、大阪大学のチームは2014年10月、米国海軍海事技術本部(ONR)などが資金提供し、米国際無人機協会(AUVSI)が運営する国際大会に参加。日米韓など15大学の学生チームはそれぞれ、ONRの開発した船体など800万円相当の支援を受け、無人ボートを開発し、性能を競った。

同紙の取材に、東大広報は、「軍事研究を禁止する方針に変更はない」としつつ、「米海軍がスポンサーに加わっているが、ものづくりの力を競う大会であるため、大学の水槽施設の使用を許可した。大会への参加は、学生の自主性を重んじた」とコメントしている。

東京新聞(中日新聞)は、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」と見間違うような左翼色の強い新聞だが、「軍事アレルギー」で過剰に反応する東京新聞の報道姿勢こそ、問題ではないだろうか。

東大では、昨年12月、大学院の情報理工学系研究科が、ガイドラインから、軍事研究について「一切の例外なく禁止」という文言を削除。今年1月、日本の大学でタブー視されてきた軍事研究を解禁したか否かをめぐって多くのメディアが報じ、話題になった。

だが、海外に目を転じれば、軍事研究を行っている大学は多い。例えば、米ハーバード大学でも、戦略学や軍事学が研究されている。研究の目的は平和を守るため。つまり、平和を守るには、軍事を研究する必要性があると考えているわけだ。また、敗戦国のドイツの大学でも軍事研究は行われており、2000年以降で、米国防総省と10億円以上の契約を結んでいたという。

日本は、海を隔てた隣国に中国や北朝鮮のような軍事独裁国家を抱える。国の危機が迫っている現状を考えれば、日本の大学でも軍事研究をタブー視する必要はないだろう。

大学や大学院で軍事研究を行った学生が、技術者として企業に入れば、日本の弱い分野である防衛産業の発展にも大きく寄与するはず。米国国務省は、日本のロボティクス技術などの分野での技術協力や製品輸入に興味を示しているというが、現時点でも、日本の軍事技術に対する海外の評価は高い。

残念なのは、肝心の日本人が海外進出に消極的な点だ。例えば、運動性や静粛性が優れた日本が誇る「そうりゅう型潜水艦」のメーカーである三菱重工と川崎重工は、今年3月にオーストラリアで開かれた潜水艦サミットを欠席。売り込みをかける機会を逃している。企業が消極的なのは、日本人の間に、軍事的なものをタブー視する「空気」のようなものが流れていることも原因の一つだろう。

日本人は、軍事や武力を持つことが「国や国民を守る」と捉え直し、大学や企業などは防衛・軍事に関する研究・開発を進め、防衛産業を発展させることが、国を発展させることにもつながる。(泉)

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