神社仏閣に不審な液体がかけられる被害が多発していた事件で、千葉県警は、米国在住で日本国籍を持つ52歳男性に対し、建造物損壊容疑で逮捕状を取った。3月の香取神社の事件が直接の容疑だが、類似の事件は16都府県48カ所に及んでいる。2日付各紙が報じた。

男性が油を撒く様子や、レンタカーが防犯カメラに写っていたことから、身元が判明した。この男性は、韓国系のキリスト教会で信徒になり、2013年5月に宗教団体を設立した人物。関係者には「神社仏閣には悪い霊がいる。油でこれを清め、日本人の心を解放する」とする説明をしていた。偶像崇拝を否定する立場を取り、神社仏閣を「破壊してください」と語る動画もネットにアップされていた。油をかける行為により、日本国内でキリスト教信仰が広まると信じている様子だったという。

キリスト教研究家からは、「(キリスト教では)油を儀式で使うことはある。ただ、他の宗教を正すためや、敵対者を攻撃するため、油をまくことは普通は考えられない」とする戸惑いの声が出ている。

容疑者の男性は、宗教に対する正しい理解がないことは明らかである。他宗の信仰の対象を汚すことで教えを広めようと考えること自体、宗教に無知であることを示している。

不審な液体がかけられる被害が相次いだことで、日本全国の神社仏閣は新たな被害に対する警戒を高めていたはずだ。神社仏閣は聖域であり、神仏とつながる祈りの場所。被害への警戒を強めることで、こうした神聖な宗教行為が妨げられた。目には見えないかもしれないが、宗教的には大きな被害が出たといえる。

神社仏閣は、単に歴史ある「重要文化財」ではない。それを汚されたことに対し、「参拝者の気持ちを踏みにじる冒涜行為」とする禰宜の声や、「罰当たりで許せない」と語る参拝者の声も紹介されている(産経新聞2日付)。

こうしたことからも、本来、この事件で問われるべきなのは礼拝所不敬罪の容疑であろう。県警は、宗教的無知による犯行に毅然とした態度で立ち向かうべきだ。さらに、礼拝所不敬罪が、建物を壊した罪である建造物等損壊罪や、モノを壊した罪である器物損壊罪よりも軽いのは疑問がある。礼拝所不敬罪は目には見えないものの大きな被害を与えていることを考慮し、相応の罰則に変える必要もあるかもしれない。(居)

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2015年6月号記事 神社仏閣に油? 聖なるものへの冒涜は許されない

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2015年4月12日付本欄 文化財に液体シミ 「信仰対象を汚す意味」が分からない日本人

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9465