セブン&アイ・ホールディングスやアステラス製薬など、大企業の会社員が入る健康保険組合が、相次いで保険料率(報酬に占める保険料の割合)を引き上げている。

健康保険組合連合会(健保連)は、全国に1403ある健康保険組合全体の約2割に当たる316組合が保険料率を引き上げ、2015年度の平均保険料率が、前年度から0.16ポイント上昇して9.02%となり、初めて9%台となる見通しだと発表した。

健康保険組合に加入する会社員の医療保険料は、月額の報酬に保険料率を掛けて算出され、通常は会社と本人が半額ずつ負担する。実際に天引きされるのは給与の9%の半分程度だが、会社にとっては事実上、従業員への給与だ。

健康保険組合全体の今年度の経常赤字は1429億円の見込みで、8年連続の赤字だ。健保連の白川修二副会長は「今後、高齢者医療への負担がさらに重くなるのは確実だが、保険料率の引き上げはこれが限界だ」と強調し、消費税増収分を活用して負担を軽減するよう求めた。

医療費増加の主な原因は、高齢者医療と生活習慣病の増加

近年、生活習慣病の診療が増え、医療費を押し上げている。窓口負担が少ないため、安易に病院に行く患者が多いことや、医療行為が多ければ多いほど医療機関の収入が増える「出来高方式」の診療報酬制度によって、病院による不必要な検査や薬の使用が行われる「過剰医療」などが問題になっている。

また社会保障制度を維持するためには、人口の1割しかいない75歳以上の後期高齢者が医療費全体の3割を占めている現状を解決しなければいけない。実際に財務省は、高齢化などによる国の社会保障費の増加を2020年度までの5年間で2.5兆円程度に抑えるために、19年以降、75歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担を現在の1割から2割に引き上げるよう提起した。

国民と医療機関の双方に「自助努力の精神」が必要

国民一人ひとりは安易に医療に頼るのではなく、「自分の健康は自分で管理する」ことで、生活習慣病などを予防することが大切だ。

また、終末医療に関しては、少しでも長く生き延びることよりも、安らかな終末期を過ごすことの方が大切だという考え方もある。病院での延命治療だけではなく、在宅医療やホスピスなど患者の希望に合わせた幅広い選択肢が必要だ。

一方、効率の悪い経営をしている赤字病院は、国の税金に頼るのではなく、マネジメントの発想を取り入れ、経営改善する努力の余地がある。

さらに、国が医療の価格を決める社会主義的な制度が、過剰医療などのひずみを生んでいるため、医療の価格設定にも市場原理を取り入れるなど、時代に合わせた医療制度に変えていくことが必要だ。(真)

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