トヨタ自動車が、2018年に中国、2019年にメキシコに新工場を建設することが明らかとなった(3日付日経新聞)。

トヨタは、リーマン・ショックによる赤字転落後、13年4月から新工場の建設を凍結してきた。しかし、最近の好調な業績と、工場の効率化による収益力の強化を受けて、新工場の建設を解禁した。投資額は1500億円となる見通しだ。

背景は、車の販売台数で世界第2位である独フォルクスワーゲン(VW)グループが、中国や中南米での生産力を強化していること。それに対抗する体制を整える。

日本の財界を取り込みたい中国

経済成長の低迷に直面している中国は、各国との経済的なつながりを強化しようとしている。日本については、大幅に減少している日本企業からの投資を再び呼び込むため、財界の取り込みに躍起になっている。昨年9月には、中国の高虎城・商務相が、張富士夫トヨタ自動車名誉会長を筆頭とする日中経済協会の訪中団と会談した。

対中投資の平和へのリスク

中国での車の需要は大きいため、トヨタが中国での生産能力を増強したいと考えるのは、よくわかる。

しかし、日本の安全保障や、アジアの平和にとってのリスクも見逃してはならない。

現在、中国の軍事的拡張を背景に、安倍政権は安全保障法制の整備などを進めている。また、歴史問題の見直しにも取り組もうとしている。

日本の財界が中国経済への依存を高めると、日中関係が冷え込み経済的損失を被ることを恐れるようになる。安倍政権にも政治的対立を生まないように求め、日本の対中政策の足を引っ張る可能性がある。

また、日本の投資は、中国による軍事支配の脅威を増長させる面もある。振り返れば1990年代、日本企業の中国進出が盛んとなり、日本の投資を受けた中国は大きな経済成長を遂げた。しかしそれに伴い、中国は覇権を広げるための軍事費や、チベットやウイグルでの独立運動などを弾圧するための治安維持費を増やし続けてきた。

経済的利益より自由と民主主義を守れ

どこに進出しようと企業の自由ではあるが、日本企業は中国市場で得られる利益のみを追求し、中国の軍事的脅威から目を背けてはならない。日本政府も経済界に振りまわされず、「アジアの自由と民主主義を脅かすなら、中国への投資はできない」と言えるほどの気概や、経済界での指導力を持たなければならない。(泉)

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