英フィナンシャル・タイムズ紙がこのほど、フランス国民戦線の党首マリーヌ・ル・ペン氏のインタビューを掲載した。「極右」というレッテルを貼られているル・ペン氏だが、彼女の主張を通じて見えてくる、現在のフランスの問題点について指摘したい。

まず、欧州連合(EU)について、ル・ペン氏は、「ユーロを離脱するということは、ユーロ圏の終わりを意味する。しかし、安いフランス・フラン(ユーロ以前のフランスの通貨)で輸出を拡大することができる」として、フランスのユーロ脱退を求めている。

フランス国債の3分の2を持っている海外の投資家が、現在のローンをフランに変換することを拒否したり、高い金利を求めたりした場合どうするのか、という問いに対して、「もちろん問題はあるが、脱退の恩恵のほうが大きいと思う」とした。

中東問題に関しては、アメリカが中東における信頼を失ったとし、フランスはシリアのアサド政権との関係修復を目指すべきとした。また、カタールやトルコがイスラム過激派のテロを支援しているとし、フランスはそうした国との関係を見直すべきと主張した。

また、「イスラム国」問題の解決には、ロシアの協力が不可欠であるとし、ウクライナ問題が混沌としているのは、EUやアメリカがロシアを挑発したからだと指摘。「ロシアを追い詰めることは、ロシアを中国の腕の中に押しやるようなものであり、今後、後悔することになるだろう」とした。

これらEUの状況や対ロシア外交については、ル・ペン氏の指摘に賛同できる面もある。EUは経済面の統合を主眼に置いた共同体だが、国家の主権や文化の違いを無視しており、どうしても悪平等や統制的になりがちだ。また、欧米の制裁で経済活動が制約されているロシアが中国にすり寄り、自国の生き残りをかけて中国の軍事拡張を手助けする危険性は大いにある。

一方で、ル・ペン氏の発言は過激で、容認できないところも多い。フランス国内で発生している、イスラム過激派のジハード(聖戦)に対抗するために、「フランス現世主義への攻撃の徹底排除」「イスラムのモスクなどで、フランス語の使用を徹底させる」「海外でジハードに参加するフランス人の国籍剥奪」などの考えを示した。

しかし、「国家による宗教への干渉」「無神論国家の確立」というル・ペン氏の主張は、ベクトルは真逆だが、イスラム過激派の非寛容さに近いものがある。

テロや恐怖による支配は非難されるべきだが、フランス現世主義の下で行われている宗教への冒涜や排斥が、宗教を信じる人々との軋轢を生んでいることも見逃せない。シャルリー・エブド銃撃事件も、本質的にはその延長上にあるだろう。

イスラム教は、他の宗教や文化に対する「寛容性」や「多様性」を取り入れる必要があるが、それは現在のフランス社会にも同じことが言えるのではないだろうか。(中)

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