貯蓄税は格差解消につながるか? (画像は Alan Cleaver / flickr

新たな税金の可能性として、ネット上で「貯蓄税」が話題になっている。テレビ朝日系列の情報番組「スーパーモーニング」が紹介したことなどがきっかけだ。

同番組が紹介した「貯蓄税」とは、1000万円以上の預貯金を持つ人に対し、年間2%の課税をするというもの。例えば、2000万円の預金があれば、毎年40万円の税金を支払わなければいけない。このメリットは次の4つだという。

  • (高所得者よりも低所得者ほど負担が大きい)逆進性がない
  • 税金を取られないように消費のためにお金を使う
  • 預貯金以外の株や不動産などに投資する
  • 口座に眠る"死に金"が活きる(推定:150~200兆円)

実は、貯蓄税に似た税金は、かつて存在した。1950年、政府は所得税の最高税率を85%から55%に引き下げた際、それを補完する税金として富裕税(0.5~3%)を導入した。しかし、想定よりも税収が少なく、個人の財産を把握するのが困難であったために、53年に廃止した。その後、政府は所得税の増税に踏み切った過去がある。

フランスでは財政赤字を解消できず廃止に

今回、話題になった背景には、格差是正を主張する「ピケティ・ブーム」がある。しかし、ピケティ氏の母国フランスでも、2年前に年間100万ユーロ(1億3千万円)を超える高額所得者に対して、最高75%の富裕税を導入したが、今年1月に廃止した。

東亜日報によれば、廃止になった要因は、「富裕税により、フランス政府が徴収した税収は2013年の2億6千万ユーロ、昨年は1億6千万ユーロだった。昨年10月基準の財政赤字847億ユーロを埋めるには程遠い上、企業の経済活動への意欲を損なうため、経済再生につながらないという批判の声が高まった」(今年1月3日付電子版)という。

結局、富裕層からお金を奪おうという声はいつの時代にもあるが、導入しても財政赤字を根本的に解消することはできず、富裕層の国外脱出などの社会的な摩擦を生むだけだった。

そもそも、貯蓄税自体が「二重課税」であり、憲法が保障する「私有財産制」の否定につながりかねない悪税と言える。1000万円の預貯金口座を分散させたとしても、来年から始まる「マイナンバー制度」により、税務署は国民の預貯金を把握できるので、もし貯蓄税が導入されれば、国民は完全に政府の監視下に置かれることになる。

高額な税金を課すことは、自由が抑圧された全体主義国家にはよく見られる現象である。日本は、そのような道を歩むべきでない。(山本慧)

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