中国は「尖閣」と表記している(左画像の左上、右画像)。

中国が領有権を主張している尖閣諸島について、日本の国土地理院に当たる「中国国家測絵局」が1969年まで日本領と表記していた地図を、近現代史研究家の水間政憲氏が月刊雑誌『Voice』2月号に寄稿した。

記事の中で水間氏は、同地図の興味深い点を次のように指摘した。

「1968年からアジア極東経済委員会(ECAFE)が、尖閣海域の約20万平方キロメートルの海底を調査した結果、ペルシャ湾級の石油推定1095億バレル(当時、日本の年間消費量の約60年分相当)と天然ガスの埋蔵の可能性を指摘した69年5月と同時期に発行された」

つまり、中国が初めて領有権を主張し始めたのは、尖閣諸島に石油埋蔵の可能性が指摘された後だったということだ。

政治的妥協は国際法とは無関係

尖閣諸島は日本領であることは明らかだが、一部の識者の中には「日中は将来、新たな領有権を持ち出さないことを約束し、主権と排他的経済水域を分離することに合意する」(2014年12月1日付米紙ロサンゼルス・タイムズ)という政治的妥協策を論じる者もいる。すなわち、日中が領土問題で対立するのをやめ、共同で資源を開発したり、パトロールを行ったりすればいいという主張だ。一見、もっともらしい意見に見受けられるが、これは日本が損をするのみで、国際法にも基づかない方策だ。

実際、米マーケット大学ロースクールのライアン・スコビル助教授が、「日本が長年、尖閣を実効支配していた」「日本人の古賀辰四郎が同地で海鳥の捕獲などをしていた」との理由から、「日本の領有権主張の方が理にかなっている」と論じた(今年1月11日付電子版米誌ナショナル・インタレスト)。その上で同氏は、政治的妥協は法的根拠の強い日本にとって不利になると指摘している。

そもそも、法律を守らない中国こそが尖閣から手を引くべきであり、日本が妥協する必要性はない。にもかかわらず、中国政府は昨年末、尖閣専門サイトを立ち上げ、言論戦を強化している。水間氏が紹介した地図のように、一次資料を公開することで、日本政府は言論戦を強化すべきだ。

なお、今月30日に発刊される本誌3月号では、先の大戦における日本軍に関する水間氏へのインタビュー記事が掲載される予定だ。(山本慧)

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