日本漢字能力検定協会が主催する、毎年恒例の「今年の漢字」が12日、京都市の清水寺で発表され、「税」が選ばれた。今年4月から消費税率が5%から8%に引き上げられたこと、10%への再引き上げが議論されたことなどが主な理由とされる。
応募期間となった11月1日から12月5日は、7-9月期の国内総生産(GDP)の速報値が発表され、安倍晋三首相が増税先送りを判断、衆院解散に踏み切った時期と重なる。4-6月期の年率マイナス7.3%の落ち込みに加え、続く7-9月期も同1.9%とマイナス成長を記録したことが、国民にとっていかに衝撃的だったかを物語っている。
増税による買い控えは消費の低迷を招き、企業投資や公共投資を大幅に減少させてしまった。経済の回復を見込んだ民間エコノミストの予測は次々と外れており、統計学を駆使する理論経済学の「科学的実証性」が揺らいでいることは、もはや誰も否定できない状況になりつつある。
この「税」という漢字を選ぶにあたり、「今年一年、この漢字が表すように良い年だった」という積極的な思いの人はほとんどいなかったのではないか。やはり、増税後の景気低迷に苦しむ国民の何らかの「意思表示」と捉えるべきだろう。
ここで、「税」という漢字の成り立ちを考えてみたい。左側の部首にあたる「禾(のぎへん)」は稲などの作物を表し、右側の旁(つくり)にあたる「兌」は衣服を脱がすことを意味する。つまり、「禾」と「兌」が合わさって、「お上が作物を抜き取る」という意味になるわけだ。
税金によって国民の「自由」を奪うことは、ときに戦争や民衆の反乱につながる。18世紀のアメリカ独立戦争の元になった「ボストン茶会事件」は、イギリス本国から輸入する紅茶に重い関税がかかり、北米大陸の移民たちが紅茶を自由に飲めなくなったことが発端だった。また日本でも、日露戦争中の重税のために戦後、民衆が官邸や新聞社を襲う「日比谷焼打ち事件」が起きている。
本来なら国民は、こうした増税に対し、自由を奪われる危機感から反発するのが普通だ。だが今、財務省やマスコミによる「社会保障のためには増税やむなし」という洗脳が、見事にこの正常なリアクションを起こさせないようにしている。
増税しても、本当に社会保障のために使われるかは定かではない。それどころか政府の借金返済に使われることは十分にありえるし、近年では、震災復興予算の流用や「消えた年金」問題が発生するなど、政治家による税金の使い方への過度な信用は禁物だ。
実際、消費税導入以後、政府のトータルの税収は下がり続けている。消費増税は財政再建の面から見てむしろ逆効果になることを、政府は国民に説明などしていない。
「税と社会保障の一体改革」を冠した増税議論に対し、国民は何も言えないでいる。だがそろそろ、「強制的に巻き上げる」という「税」の本質と、「福祉目的」を隠れ蓑にした政府・マスコミによる洗脳に一刻も早く気づき、そうした改革は幻想だと見抜かねばならない。と同時に、政治家は「税金ありき」の国家運営を改め、国家ビジョンと民間の活力によって元手を少しずつ大きくしていくという資本主義の原点に立ち返るべきだ。(翼)
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2013年12月号記事 「税と社会保障の一体改革」という幻想 (Webバージョン) - 編集長コラム