安倍晋三首相は、18日夜に記者会見を開き、消費増税を1年半先送りにし、衆議院を解散することを表明した。会見では、「財政再建の旗は降ろさない。必ず10%に引き上げる」と述べ、財政再建のために、アベノミクスを実行し続ける必要性を強調。選挙戦では、アベノミクスの成否が問われる公算となる。

解散が急浮上した背景は、4~6月期の実質GDPが7.1%のマイナスを記録し、次の7~9月期もマイナス成長を続けたことにある。これを受け、安倍内閣は増税の先送りを決定。甘利明経済財政・再生相も17日、「デフレ下で消費増税を行うことの影響について学べた」「企業利益は過去に例のないくらいに好業績をあげている。それが内部留保にとどまらず、雇用者報酬に反映されることが一番大事だ」などと語り、増税先送りの必要性と経済界に賃上げを要請した。

しかし、政府がいくら取り繕おうとしたところで、増税は実体経済に大きな打撃を与えた。甘利氏の「学べた」という発言は、増税に苦しむ国民の神経を逆なでにするもので、企業の「内部留保」に着眼した点も、大企業を悪者にする日本共産党の発想と瓜二つだ。

そもそも、消費増税の失敗は、5%に引き上げた橋本龍太郎内閣の時にすでに実証済み。増税が日本経済を破壊させる悪手であることも分かっているはずだ。ゆえに、安倍内閣が学ぶべき教訓は、消費税を5%に引き下げ、消費マインドを活性化させることだ。

皮肉なことであるが、安倍首相自身が、増税の影響はもちろん、「アベノミクス」の本質を理解していない。特に、大きな期待が集まっていた第3の矢の「成長戦略」は、規制の緩和ではなく、「規制の強化」に向かった感が否めない。

「女性の活躍」と銘打った政策では、女性管理職の割合を2020年までに3割にするという政府目標を据えた。また、厚労省も、社員が取得する有給休暇の消化を義務付けることを検討。これらが、業種を問わずに一律に適用されれば、企業活動に支障を来しかねない。

また先述したように、昨年に続いて、政府は2度目の賃上げを要請している。政府の圧力で、労働者の賃上げに向かったとすれば、株主の利益を侵害することになる。

さらに規制強化の流れは、2015年開学を目指していた幸福の科学大学の不認可にも影響を与えた。国家が学問とは何かを定義し、新しい大学で学びたい人々の願いをつぶしたのだ。

「私の第3の矢は日本経済の悪魔を倒す」とホラを吹いた安倍首相ではあるが、中身を見れば、「規制強化のパッケージ」が並ぶ。政府の都合で、経済や企業活動がコントロールできると思うのなら、大間違いであり、しっぺ返しに遭うだろう。(山本慧)

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