最近、世界経済に陰りが生じている。米英の経済は好調に見えるが、消費税増税による日本経済の失速や、中国の経済成長率の低迷などが顕著になってきた。

しかし、25日付のエコノミスト誌は、欧州連合が経済危機に陥る可能性があることが、最大の問題だと指摘した。ドイツの経済成長のつまずきと、デフレによる価格低迷のせいで、6年間で3度目の不況を呼びかねないとしている。

2008年の金融危機から、世界中がデフレと戦っているが、欧州のインフレ率は0.3%であり、来年はマイナス領域 (デフレ) に入りかねない。

しかし、第二次大戦前の超インフレ時代の記憶が未だ鮮明に残っているドイツは、金融緩和によってデフレと戦うことに抵抗し続けており、その姿勢は、ドイツがもっとも影響力を持っている欧州銀行の金融政策に直接現れている。

また、ドイツは欧州連合各国に義務付けられている、単年度財政赤字額がGDPの3%、国債残高がGDPの60%という「安定・成長協定」にこだわり、財政赤字と経済低迷で苦しんでいる欧州諸国に緊縮政策を強要してきた。

しかし、デフレに緊縮財政を上乗せすれば、更なるデフレと経済成長の低迷がもたらされるだろう。それを身をもって体験してきた南欧州の国々は金融緩和を求めてきたが、ドイツは頑なに拒否し続けてきた。

同誌は、「欧州社会は日本のような単一民族で構成されていないため、経済的な低迷が悪化して長引けば、資本逃避とポピュリスト政権の台頭によって、ユーロがいずれ崩壊する」と指摘している。

欧州の経済問題の原因はいくつか挙げられるが、その一つとして、国家財政と実体経済の優先順位を逆転させる傾向があることだ。国家財政の負債を減らそうとするあまり、実体経済への影響を考慮に入れることなく緊縮政策を行い、結果として実体経済が低迷してしまう。それによって、トータルの税収減がもたらされ、さらに国家財政を圧迫するという悪循環を呼んでいる。

民主主義の原理の一つは、民を主とし、公を従とすることだ。政府の経済政策は、実体経済の成長を優先させて国民を富ませることに主眼を置き、その結果として国家財政を安定させるべきである。(中)

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