アメリカを代表する超一流ホテル、ウォルドルフ・アストリアが中国資本に売却されることとなった。

1931年から続くウォルドルフ・アストリアは、ヒルトン・ホテル・ファミリーが経営するホテルの中でも最上級ブランドであり、各国の首脳や元首が好んで宿泊する。史上最高額の19.5億ドルで、中国資本の安邦保険集団に売却される。

売却契約の内容として、今後100年はヒルトン財団がホテルの運営を続けることとなるが、ホテル及びその土地の所有権は安邦保険集団に譲渡される。

アナリストの中には今回の買収を、1989年の日本の三菱地所によるロックフェラー・センタービル買収劇に対比する者もいる。

実際、中国は今バブル経済の真っ只中にあり、地価の高騰、土地を担保とした社債の急激な上昇、老齢人口の増加、輸出依存経済が限界まで来ているなど、その経済状況は当時の日本と酷似している。もし中国が日本と同じ道を辿るとしたら、バブル崩壊から来ると思われる国内の不安定化は、中国資本の撤退という結末に終わる可能性もある。

この危機感が、中国の世界各地における土地の買い上げに繋がっている。ここには「侵略」と「担保」という2つの意図が見て取れる。

たとえば、海外で農場を買い上げ、農産物を中国国内の消費に回したり、今回のような買収によって経済的影響力と支配力を強めることは侵略的意図とも言えるだろう。しかしその反面、資本を海外のより安定した固定資産に流すことによってその安全を図ることは、中国国内が不安定化した場合、逃げ場を確保するという担保にもなっている。

日本にとっては、いずれも歓迎できる動きとは言えない。中国経済の不安定化は、世界経済に多大な影響を与え、世界的な景気低迷の引き金になりかねず、日本もその余波をまぬがれることはできないだろう。

そういった経済的リスクを減少させるために、日本は今、脱・中国経済依存を推進する必要性に迫られている。(中)

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