ジャーナリストの池上彰氏が、朝日新聞の慰安婦問題の検証記事に関する原稿掲載を拒否されたとして、同紙での連載中止を申し入れたことが2日付各紙報道で明らかになった。
池上氏が連載中止を申し入れたのは、朝日新聞で毎月1回掲載される、「池上彰の新聞ななめ読み」。1つのニュースに関して、池上氏が新聞各紙を読み比べて、その内容を自由に論評するといったもの。今回、池上氏は同コラムで、朝日新聞の慰安婦問題の検証記事や、それに対する他紙の反応などに触れ、「朝日は謝罪すべきではないか」との主張を展開する予定だったとのこと。だが、それを拒否されたため、「信頼関係が崩れた」として、池上氏側から連載中止を申し入れた。
産経新聞の取材によると、連載を始めるにあたって池上氏は「朝日の批判でも何でも自由に書いていい」と言われていたという。同氏は以前、連載内で東京都議会のセクハラやじ問題に関して、野次を発した都議が名乗り出た後に「天声人語」で取り上げたことが、他紙に比べて遅かったと指摘。「反応の鈍さは残念」と批判した。
では、今回の慰安婦問題の検証記事に関する記事はなぜ掲載できないのだろうか。日ごろから人権の大切さを強く訴えている朝日新聞が、重要な人権である「言論の自由」を自ら侵害するような行為に出たのは「言行不一致」も甚だしい。今回の朝日の掲載拒否については、同社の現役記者も「ツイッター」上に疑念の声を投稿するという異例の事態が起きている。
テヘラン支局長の神田大介氏は、「報道が事実であるかどうか、私の立場では知る由もありません。また、事実であったとして、その意思決定が誰によってなされたかも知りません。しかし、良心を持つ記者として、対立する意見を封殺するような行為があったとするなら、許せないということです」とツイート。
ニューヨーク支局の中井大助氏も、「経緯は分かりませんが、報道の通りとすれば池上彰さんの原稿を掲載できないと判断した人はぜひ、紙面の信用が何に起因するのか、考えてほしい。恥ずかしく、悲しいです」とした。
内部批判まで噴出し始めたため、朝日新聞は4日付朝刊で再開するとのコメントを出した。だが、「言論の自由」を盾に、慰安婦問題について「誤報」を続けて国益を害しておきながら、自らへの批判は許さないというような傲慢な報道姿勢を改めなければ、社員と読者のさらなる「朝日離れ」を加速させるだけだ。実際、同紙の購読者数も、昨年11月から今年4月にかけて約9万部落ち込んでいるという(6月3日付MEDIA KOKUSHO)。朝日新聞は、報道機関としてのあり方を今一度振り返る必要があるのではないか。(冨)
【関連記事】
2014年10月号記事 従軍慰安婦報道 朝日新聞は誤報の責任を取り国民に謝罪を - The Liberty Opinion 2
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8314
2014年8月5日付本欄 朝日新聞が慰安婦記事の誤りに「反省特集」するも、強制連行の有無については的外れな「弁解」
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8242
2014年8月6日付本欄 【各紙読み比べ】朝日新聞の従軍慰安婦報道の「誤報」 分かれる各紙の反応