ウクライナでのマレーシア航空機撃墜事件を受けて、欧米諸国はロシアへの追加制裁を決めた。アメリカは基幹産業であるエネルギーや防衛、金融関連の企業への圧力を強める。EUもロシアの政府系金融機関の資金調達を禁止したり、石油掘削技術の提供を禁止したりするが、ロシアへの依存が強い天然ガスは対象から外す。アメリカの制裁にEUが足並みを揃えた形だ。

日本はこれまで、ロシア政府の関係者へのビザ発券停止などの制裁を行ってきたが、28日に追加制裁を表明。クリミア編入やウクライナ東部の混乱に直接関与していると見られる個人や団体の日本国内の資産を凍結することを決めた。ロシア外務省は「非友好的で近視眼的な歩み」と非難している。

ただ、きっかけとなったマレーシア機の撃墜に関しては現地での国際調査が進んでおらず、不明点が多い。アメリカの国家情報長官室は27日に親ロシア派が砲撃した証拠だとする衛星写真を公開。ロシア領内から多連装ロケット砲が発射され、ウクライナ軍の陣地に着弾した跡が写っているとした。

だが、現時点では、ロシア政府や軍が撃墜に直接関与している決定的な証拠はない。仮に親ロシア派によるものだとしても、彼らがロシア政府や軍のコントロール下にあるとは限らない。アメリカの情報当局の関係者も、次のようにコメントしている。「ミサイルを発射したのが誰か、また、ミサイル発射の際にロシアの工作員が立ち会ったかどうかも分からない。親ロシア派が誤って撃ち落としたというのが最もありうる説明の仕方」(22日付AP通信)。

アメリカは事件の全容が不明な段階でロシア制裁を強め、包囲網を作ろうとしていると言わざるをえない。経済的なダメージを受けるロシアは、中国と接近せざるをえない事態に追い込まれつつある。このまま制裁を強め、仮に、「日米対中露」という対立構造ができてしまえば、「第二の冷戦」とも言える事態となり、日本は安全保障上、極めて危険な状況に陥る。

秋に予定されているプーチン大統領の訪日について、ラブロフ露外相は28日、「招待があれば検討し受け入れる」と話し、日本の制裁をけん制した。日本の菅義偉官房長官は「日露関係はわが国の国益に資するよう進めていく」とコメントしているが、中国とロシアの接近を防ぐことこそ国益になることを見逃してはならない。中立の立場で事態を見つめながら、外交判断を行うべきだろう。(晴)

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