発足して1カ月が過ぎた、インドのモディ政権。「親日派」とも言われるモディ首相の動向は、5月の総選挙時から、各メディアが報じてきたが、周辺国に積極的に仕掛ける動きが目立つ。果たして、中国の脅威にさらされている日本は、民主主義の価値観を共有するインドを、「対中国包囲網」に取り込めるか。

インド外務省はこのほど、国際原子力機関(IAEA)の追加議定書への批准を決めた。これによって、IAEAが、インドの原子力施設を抜き打ち査察できるようになる。また、この批准の背景には、原子力の燃料や関連施設の輸入を促進させる狙いがあると見られる。

日本は、インドと原発の輸出を可能にする「原子力協定」の締結に向けて、現在、交渉中。インドでは、発電量全体の2%程度である原発を、2050年までに25%まで増やす計画があり、ここに日本が参入する意義は大きい。

一方インドは、中国との国境紛争を抱えており、「親日国」という印象も強いが、モディ氏は、国際政治上の現実的なパワー・バランスなども見極めた駆け引きを行う「リアル・ポリティックス」の側面を見せている。

5月の選挙中、モディ氏は演説で、中国について「拡張主義的な態度」と批判し、中国をけん制。しかし、モディ氏は選挙直後の同月末、就任後初となる外国の首脳と電話会談したが、その相手は、中国の李克強首相だった。その際モディ氏は、両国の緊密な関係の維持を再確認するともに、国境紛争などの懸案の解決に向けて協議していきたいと表明している。

核保有国であり、世界最大の民主主義国のインドが、今後どのような外交を展開するか、世界中は注目している。モディ氏は今夏にも訪日し、安倍晋三首相との首脳会談が予定されている。

日本国内に目を転じれば、今夏の再稼働を目指していた鹿児島県の川内原発の再稼働が、秋にずれこむ見通しで、震災後初めて、原発ゼロで8月を迎えようとしている。このような状況で、インドに対して、胸を張って日本の原発を売り込むことができるのだろうか。

原発の再稼働以外にも、集団的自衛権や憲法改正、歴史問題など、安倍政権が解決しなければいけない課題は多い。だがそれは、裏を返せば、これまで日本の政治をリードしてきた自民党の「借金の返済」とも言える。

外交政策を1つ間違えれば、国の存立が危うくなるような混沌とした国際社会の中で、日本はインドとしっかりと手を組み、同盟レベルの関係を築く必要がある。(冨/格)

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2013年5月7日付本欄 安倍政権「原発外交」 それならば国内でも再稼働・新設を進めよ

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