STAP細胞の論文をめぐる問題で、理化学研究所(理研)の調査委員会が、小保方晴子ユニットリーダーの不服申し立てを退け、再調査しないとする結論をまとめた。7日付読売新聞夕刊などが報じた。

この結論を受けて、理研の理事会は、今後、小保方氏らの処分の検討と論文撤回の勧告を行う見通しという。理研の規定上、小保方氏が再度不服申し立てを行うことはできず、不正が確定すれば、同氏は懲戒処分となる可能性が高い。

だが、小保方氏が4月の会見でも説明したように、論文を撤回することは、論文の結論そのものが間違っていたことを認めたことになる。現在は、論文のミスを修正した段階であり、結論が間違っていたことが判明したわけではない。

論文の共著者の1人で小保方氏の上司にあたる理研の笹井芳樹氏も、4月の会見で、「STAPを前提にしないと説明できない現象がある」と述べており、STAP論文が、新しい発見の報告を行ったものである事実は間違いないはずだ。なぜ理研は、理研内で行う検証実験の結果も待たずに、論文の撤回や小保方氏の処分を急ぐのか。

仮に、小保方氏が論文を撤回すれば、理研が申請している特許も撤回せざるをえなくなる。もしその後、別の研究者によってSTAP細胞が再現されれば、理研も小保方氏も失うものは大きいだろう。一方、小保方氏が論文を撤回せずに理研を辞め、別の研究機関に移るという選択肢もある。そこで小保方氏がSTAP細胞を再現した場合、理研の面目は丸潰れだ。

もうひとつ見逃せないのが、STAP論文の調査委員長を務めていた石井俊輔・理研上級研究員ら4委員の論文の中で、画像の切り貼りの疑いが浮上し、石井氏が調査委員長を辞任したことだ。これに関して、理研は調査の必要があるか否か確認中のようだが、「石井氏らの切り貼りは正当で、小保方氏の切り貼りは不正」と言うつもりなのか。

一度、小保方氏の論文を不正と判断した理研は、引っ込みがつかなくなり、幕引きを焦っているようにも見える。

STAP論文は、これまでにない方法で万能細胞をつくることができるという「現象」を報告した立派な科学論文だ。その発想はオリジナルのものであり、これから科学的に探究していく価値があるからこそ、権威ある科学誌ネイチャーに掲載された。論文掲載の「マナー」にミスがあるからといって、また、他の研究者が再現できていないからといって、撤回させるべきではない。

ミスを不正とされ、簡単に研究者生命を奪われるような状況では、日本の研究者はミスを恐れ、新しい発見を発表することができなくなる。そうすれば、国の宝である優秀な研究者の多くが、海外に逃げてしまう。日本の科学や産業の衰退を招きかねない。今まさに、その引き金を引こうとしている、理研の罪は重いと言える。(紘)

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