政府は、6月にまとめる「成長戦略」の内容として、起業を増やすための新政策を検討している。このほど、その新政策に「ベンチャー企業が投資を受ける際の税制優遇」「補助金で起業家の生活支援」などが盛り込まれる見通しであることがわかった。(3日付日本経済新聞)

日本の起業減少は深刻な問題だ。「起業希望者数」は1997年に約167万人だったが、2012年には約84万人と半減している。また、新たな企業がどれだけ増えたかを示す「開業率」は、米国が10%前後、英国が10%台前半、フランスが10%台後半であるのに比べ、日本は約4%と半分以下。日本は"起業後進国"と言える。

起業の減少は、経済の衰退と表裏一体だ。国富を増大させる産業の芽は、常に起業家群の中にある。現代の日本の産業を支えているトヨタもソニーもパナソニックも、一人の起業家から始まった。

経済成長は「人口増加」「生産機械などの増加」「技術力やブランドなどの創造」の3要素で成り立っている。日本経済の構造では、最初の「人口増加」よりも「技術力やブランドなどの価値」の役割がはるかに大きい。リスクを取って今までに無い製品やサービスを生み出す起業が、経済成長の主役と言っても過言ではない。起業家の減少はしばしば騒がれる「人口減少」よりも深刻な問題だ。

なぜここまで起業が少なくなってしまったのか。大きな理由としては、長引く不況がある。日本の開業率は、1980年代後半のいわゆるバブルと言われる好景気に急増したが、その後の不況で減少している。景気が悪ければ、新たに始めた事業が不発に終わる可能性が高く、起業するリスクも大きい。

また、80年代や90年代は20代後半から40~50代の自営業主が多かった。しかし現在は、60歳~70歳以上の自営業主が最も多く、若い世代の起業家が増えていない。不況時代をあまりに長く経験した、あるいは好景気を知らない若い層の起業家精神が萎縮している可能性が高い。

そうした背景を考えれば、起業家を増やす特効薬は、景気を良くすることだ。もちろん、政府が現在検討しているような税制優遇などにより起業を“楽にする"ことは重要だが、根本的に事業を“成功させる"には、経済全体の需要が旺盛でなければいけない。その点、需要を冷やし、体力のない中小企業に大きなダメージを与える消費増税は、起業家増加に逆行した政策だ。

長い目で見て経済成長を実現するには、目下の景気を本格的に上向かせることに最善をつくす必要がある。ここで「財政再建」と称して景気を冷やせば、未来の産業、未来の税収源を潰すことになるかもしれない。(光)

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