化粧品大手「資生堂」が、8%への消費増税が施行された4月1日から2週間の売り上げについて、前年同月比で30%落ち込んだことを、28日付のFinancial Times紙が報じた。

同紙によると、3月の売り上げは前年同月比20%増加していたことから、資生堂は今回の売り上げの下落を、増税前の駆け込み需要に大きく影響を受けたものと受け止めているという。また、この状況を受けて同社は、増税による消費者心理の「締め付け」が行われていることがうかがえるという見解を示している。

消費増税は、企業が自社の商品やサービスに価格を転嫁する、しないにかかわらず、収益の圧迫要因となる。それは、消費者心理の「締め付け」が進む中、3%の増税分の納税をしなくてはならないのが企業側であるからだ。

企業は、その収益の圧迫から逃れるために、様々な経費の削減を行うなど、「企業努力」を行う必要が生じ、場合によっては、長期的な成長に必要な研究開発費や設備投資費の削減・先送りを行うケースも出てくるだろう。また法人税とは違い、消費税は、企業が黒字であろうが赤字であろうが関係なく、納税を強いるため、特に経営環境が厳しい中小企業にとっては、さらなる「忍耐」を迫られる。

にもかかわらず、安倍晋三首相は増税に先立ち、景気の循環を良くしようと、財界に対し、「賃上げ」を要望した。それが功を奏したのか、28日付日経新聞がまとめた主要企業227社の平均賃上げ額は6375円に及び、基本給を上げるベースアップを実施する企業は半数近くに上った。

しかし、賃金を上げたからといって、景気が良くなるわけではない。冒頭の資生堂の例でも見たように、消費増税によって、消費者の買い控えが起きれば、モノが売れなくなる。そうすれば、必然的に企業の収益は落ち、高い給与を払い続けることができなくなる。そして、給与の削減が行われれば、消費の低下にさらなる追い打ちをかけることになる。

日本のGDPの約6割は消費が占めるが、消費増税を契機に消費が落ち込むことで、日本の経済は大きなダメージを受けることになるのだ。

今年の年末には、8%から10%への増税を実施するか否かの判断が行われるが、消費増税は企業活動や消費活動の減退を招き、日本をさらなる不況へ招くことになる。これ以上の増税は決して行うべきではない。

(HS政経塾 西邑拓真)

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