政府は、日本企業によるエネルギー輸送を支援するための官民合同の検討会を、4月中にも立ち上げることを決めた。パナマ運河経由のシェールガス、北極海経由のロシア産天然ガスなどに関して、運搬船の保険制度などの整備を通じてエネルギー輸送を支援する方針だ。

現在、日本のエネルギー供給は危機的状況にある。というのも、日本のエネルギー自給率は、原発が稼働しても19.5%、停止している現時点では4.4%と大変低く、ほとんどを輸入に頼っているからである。さらに悪いことに、日本の原油の90%、全一次エネルギーの50%以上が、南シナ海の海上輸送経路(シーレーン)を通って輸入される。その南シナ海に対して、中国が一方的に管轄権を主張し、フィリピンやベトナムとの緊張が高まっている。日本には、エネルギーを安定的に確保するための対策が不可欠なのだ。

政府がパナマ運河経由や北極海経由のエネルギー輸入に積極的な理由は、シーレーンを分散させて、南シナ海を通らず輸入できるエネルギーを確保するためである。

政府はそれ以外にも、シーレーン防衛のための対策を講じつつある。このほど武器輸出三原則を改め、防衛装備移転三原則を新たに閣議決定した。これにより、シーレーンの沿岸国、中国の海洋進出に悩む各国と、装備面での協力体制が実現できる。

また集団的自衛権についても、5月には安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)が、新たな憲法解釈案を盛り込んだ報告書を安倍首相に提出する見通しである。

このように、昨今様々に取り沙汰されている政策は、エネルギー安全保障の強化で一貫している。この点で、政府は国民生活を守るために適切な対応を進めていると言えよう。一部マスコミ報道では、すぐさま「軍国主義への回帰」などの批判が飛び出すが、感情的に反発するのではなく、エネルギー安全保障に対して理解を示すべきだ。

ただ集団的自衛権に関しては与党内にも慎重派がいる。公明党に配慮するあまり、骨抜きにされては元も子もない。また集団的自衛権の行使を担保する基本法であり、自民党が選挙公約としてきた「国家安全保障基本法」の制定が見送られることになった。エネルギー安全保障を確保するための課題は山積しており、政府には一層の実行力を期待したい。

(HS政経塾 田部雄治)

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