長らく国防政策の足かせとなってきた原則が見直されようとしている。

政府は11日、国家安全保障会議(NSC)の会合で、これまでの「武器輸出三原則」の代わりとなる「防衛装備移転三原則」の原案を決定した。新しい「三原則」では、国際平和や国連決議の違反国や紛争当事国、輸出する装備を適正に管理できない恐れがある国を除き、NSCの厳格な審査を通れば、日本から武器を輸出できるようになる。現在、与党が内容を協議しており、今月中に閣議決定される見込みだ。

そもそも武器輸出三原則の始まりは、1967年に佐藤栄作内閣が定めた、共産国や紛争当事国などへの武器禁輸である。その後76年には、三木武夫首相が、全面的な武器禁輸策を表明。これにより日本は現在、アメリカ向けの武器技術の供与や戦闘機の共同開発などの例外を除き、防衛装備品を輸出できなくなっている。三原則があることで、国内の防衛産業の育成や、武器の国際共同開発を行いにくくなっており、中国の軍拡の脅威に備える上での障害になっている。

安倍首相も就任以来、国防強化の観点から、武器輸出三原則の見直しに力を入れてきた。そして今回、「防衛装備移転三原則」に名称を変えて原案をまとめ、輸出基準の緩和に一定の目処をつけることができた。

今回の原則見直しで最も重要な点の1つは、「シーレーン沿岸国に日本の装備品を輸出できるようになる」ことだ。新原則で日本は、東南アジア諸国やインド、ペルシャ湾沿岸国に防衛装備を供与できるようになる。これは、中国の海洋進出を牽制する上での布石となるだろう。

南シナ海では中国が周辺国と領土争いを繰り広げており、フィリピンやベトナムは中国の領有権侵害を抑えられなくなってきている。それを背景に、東南アジアには、海上自衛隊の護衛艦で、艦齢基準を超えた"中古船"の輸入を希望する国もある。日本が武器禁輸に拘泥して「宝の持ち腐れ」をするくらいなら、"中古護衛艦"を輸出し、人員の訓練や整備・補修の指導もしながら、東南アジア諸国との連携を強めていけばいい。

しかし、集団的自衛権の問題にしても、日本は、「日本近海での米軍の艦船への攻撃に、自衛隊が対応できるか」といった点ばかり議論しており、「一国平和主義」から脱皮できていない。資源の輸送路であるシーレーン防衛は、日本にとって「死活問題」であり、本来なら、東南アジアやインド、オーストラリアとの連携にまで踏み込んだ議論をすべきところだ。

新たに示された「防衛装備移転三原則」の下では、ASEAN以外にも、インドやオーストラリアに日本の装備品が輸出される見通しだ。このような装備品の輸出と集団的自衛権の行使容認を合わせて、東南アジアやインド、オーストラリアとの連携のあり方も議論し、海洋進出する中国にいかに対峙するかを真剣に考えなければならない。

(HS政経塾 森國英和)

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