日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国の首脳は、「日・ASEAN特別首脳会議」を東京の迎賓館で開き、共同声明を採択した。

共同声明では、公海上空の「飛行の自由」と民間航空機の安全確保に向けて協力を強化していくことを明記したほか、会議後に首相官邸で開かれた記者会見では、安倍首相が「東シナ海、南シナ海の現状を変えようとする動き、自由な飛行を基礎とする国際航空秩序に制限を加えようという動きがみられる」と述べるなど、声明で国名は出さなかったものの中国を批判した。

これに対し、中国は、開催前から「日本による中国包囲網」と受け止め、警戒してきた。声明採択後も、中国国営テレビが「中国の防空識別圏に対抗するため、アジア各国に海洋と空の安全を派手に宣伝し、『中国包囲網』に加わるように強いている」と論評している。

「尖閣諸島は中国の核心的利益だ」「日本は南京大虐殺を行った」などの嘘を、「派手に宣伝」している中国に言われたくない、と突っ込みたくなるが、こうして神経をとがらせているところを見ると、今回の会議の開催と声明は、中国に対する一定の牽制になったと言えそうだ。

ただ、今回の声明は、各国に具体的な対応を求めるものではなく、日本が目指した「防空識別圏」の文言も入らなかった。ASEAN諸国の中には親中国の国もあり、また、親中国ではなくても、中国を刺激したくないという気持ちがある。今回の会議では、対中国の歩調をそろえることの難しさも浮き彫りになった。

とはいえ、ASEAN諸国の日本への期待は大きい。声明で日本の「積極的平和主義」に期待を表明したほか、日本政府の経済支援や、日本企業への協力を求めた。

また、マレーシアのナジブ首相は12日に安倍首相と会談した際、日本の高速鉄道や石炭火力発電の技術の高さに触れながら、インフラ整備への投資に対する期待を述べ、中国の防空識別圏設定について安倍首相が、「力で現状を一方的に変える試みで受け入れられない」と非難したことに対して理解を示し、海上安全での協力を進めたいとの考えを示した。(12日付日経新聞)

フィリピンやインドネシアなども、拡大する中国へのバランサーとして日本に期待しており、日本の憲法9条改正を歓迎している。

東南アジアが欧米の植民地から解放されて60年以上経った今、今度は中華帝国主義の手が伸びている。独立運動の鎮圧と民族浄化が行われているウイグルやチベットなどの例からも、もし東南アジアの国が中国の手に落ちれば、再び植民地化されることは容易に想像がつく。日本は「アジアの盟主」として、各国やアメリカと協力しながら、この地域の安定と自由を守っていかなければならない。(紘)

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