安倍晋三内閣はこのほど、武器輸出を事実上禁じていた「武器輸出三原則」を見直し、基準を満たせば、武器輸出を認めるという「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。

1967年、佐藤内閣が決めた「武器輸出三原則」は、1983年の中曽根内閣で、アメリカへの技術供与という「例外」を認めたことを皮切りに、小泉内閣ではインドネシアに巡視艇を供与するなど、なし崩し状態になっていた。

新原則での武器輸出は、「条約違反」「紛争当事国」「国連の決議による禁輸国」を除き、平和貢献などに資する場合に限る。これは、旧来の例外を整理し、友好国との武器の共同開発を容易にするなど、日本の防衛産業の発展にも寄与すると期待されている。

しかし、今回の新原則について、朝日新聞や東京新聞は「武器輸出の歯止めがあいまい」(2日付)と懸念を示し、日本共産党の機関紙・赤旗では、「(営利目的で武器を売る)死の商人の仲間入りをやめよ」(3月29日付)と、日本が平和を脅かす側になるという極端な見方をしている。平和維持のための抑止力としての武器と、侵略を目的とした武器の違いについて区別ができていないと言わざるを得ない。むしろ、武器輸出の問題を指摘するのであれば、中国こそが問題視するべきだ。

中国は、武器の輸入で急速な近代化を図りつつ、他国から習得した技術でつくった武器を低価格で輸出している。ストックホルム国際研究所(SIPRI)の報告書によると、過去5年の間、中国の輸出量は、3倍以上に増加し、世界で4番目となるなど、武器の輸出大国になったことが明らかになっている。

小野寺五典防衛相が、3月18日の会見で「アフリカの紛争地域で中国の銃器が多数出回っているとの指摘がある」と述べたように、中国は、コンゴやスーダン、ソマリアなどの紛争国に武器を輸出している疑いがある。これらの国は、国連が武器の輸出入を禁じており、中国が武器輸出をしているのであれば、国連に対する背信行為と言える。

さらに、昨年10月のSIPRIでは、「中国は、武器輸出に関する業者や配送などの情報を開示しない」と、情報提供に協力的ではないことも指摘されている。

自国の武器輸出に関して、中国の洪磊報道官は、4月1日の会見で「中国は関係する政策で責任を果たしている」と述べるにとどまっている。

国連の常任理事国である中国が、十分な情報開示をしないばかりか、国連の目をかいくぐって、紛争国に武器を提供しているのであれば、この行動こそが「死の商人」である。日本国内メディアは、中国の不透明な軍拡の実態を解明し、なぜ、日本が武器輸出を認めなければいけなくなったかという理由を、正しく国民に伝えるべきだ。(慧)

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