インドネシアが主催する「ジャカルタ国際防衛会合」が、19日から20日の日程で開催された。オーストラリアや日本など50数カ国の政府関係者や専門家が集まり、中国の東シナ海進出や海洋の安全保障などについて話し合いが行われた。
同会合でハリス米提督は、クリミア問題にふれて、アジアで起きている領土争いについて懸念を示し、「中国の失地回復主義の傾向」を強く批判した。清朝時代の領土回復を画策する中国は、東シナ海や南シナ海にある島の領有権の根拠を歴史に求め、軍拡を背景にした外交により、周辺地域を不安定化させている。ハリス提督は、これに強い危機感を表し、領有権争いの行き着く先が「アジアのクリミア化である」と指摘した(英紙フィナンシャル・タイムズ 19日付電子版)。
こうした中国の軍拡に対して、アジアの一部の国はすでに防衛体制を構築し始めている。
インドは、この10年間で軍事費を3.5倍に増やしており、特に海軍の増強が目覚ましい。この軍拡に関して、インドのガガンディープ・バクシ少将は、21日付米誌ディプロマットのインタビューで、「インドの軍拡は、中国の軍事的台頭に向けられたもの」と発言。「中国の軍事予算は、実際よりも過小評価されている」と指摘した上で、「インドは日本やベトナムとの間で、戦略的な協力をより深めていく必要がある」とした。
また、中国と南沙諸島の領土問題を抱えるフィリピンは、1990年代に一度米軍を撤退させたものの、中国の脅威が強まる中、このほど新たに米軍の基地使用に合意した。今回の合意により、米軍の人員や艦艇の配備が増加する見通しだ。フィリピンの憲法では、「外国軍の駐留を認めない」という条項があり、憲法違反の可能性も指摘されているが、政府は米軍の駐留について「憲法違反に当たらない」と発表。4月のオバマ大統領との会談で最終合意する予定だ。
このような中国を牽制する国がある一方で、ASEAN諸国全体で見ると、経済的に中国依存を強めており、安全保障上の危機感が薄い状況だ。ミャンマーやカンボジア、ラオスは中国の顔色をうかがい、強い態度で臨めないでいる。フィリピンは、南沙諸島の領土問題を国際司法裁判所に提訴したが、同じく領土問題を抱えるマレーシアは、提訴する姿勢を見せない。対中姿勢に温度差があるASEANは、南シナ海の領土問題に対処する行動規範が策定できず、機能不全の状態だ。
中国は、ウイグルやチベットを強奪し、人権弾圧を繰り返すなど、政府が主導して非人道的な行為を行っている。ASEANは中国と経済的な関係があったとしても、安全保障や領土問題で、中国に妥協してはならない。日本は、すでに中国の本質を見抜いている国と連携を取りながら、対中防衛で遅々として連携が進まないASEANに改革を迫り、そのリーダー役を引き受けるべきだ。そのためにも、自国の経済や国防を強化しなければならない。(慧)
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