岸田文雄外相が、政府開発援助(ODA)大綱を年内に見直す方針であることを表明した。国家安全保障戦略や成長戦略などに沿い、国際貢献や国益、日本経済活性化につながるODAの活用を打ち出し、国民の理解を得ることを目指す。

これまでのODAでは、基本理念として「人道的見地」や「平和国家の使命」などを掲げてきた。だが今回の見直しで、これらに「わが国にとっての安全と繁栄」という要素を加える。

現在、日本のODA支出額は世界第2位で、約1兆4千億円。支援の形態としては、無償資金協力や技術協力、政府貸付(円借款)などがある。アジア地域以外に、中東やアフリカのほか、過去に共産主義体制下にあった中欧・東欧や旧ソ連邦の国々に対して支援している。また、台風や地震などの災害時には、物資や救援隊の派遣などの緊急支援を行っている。

なかでも近年、安倍晋三首相の積極的なアジア外交の一環として、政府はアジア各国に積極的に円借款を行っている。3月24日には、ミャンマーを訪問した岸田外相が、送配電網のインフラ整備のために新たに247億円の円借款を行うことを表明。同国内の鉄道や病院の整備のため、約78億円の無償資金協力を行う交換公文に署名した。

1月の安倍首相のインド訪問でも、シン首相との会談で、ニューデリーの地下鉄整備などに、新たに2千億円の円借款を行うと表明している。

こうした中で、長らく疑問視されてきたのが中国への支援だ。日本は中国に対して、これまで約3兆円の支援を行ってきた。だが、同国が世界第2位の経済大国になった現在も技術協力などで支援を続けている。支援を続ける理由としては、ODAは「1人あたりの国民総所得(GNI)」を参考にするためで、中国はいまだに世界79位の864,170円(2011年、円換算)と、タイやウクライナとほぼ同じ水準だからだ。

しかし、その中国は、アフリカや南太平洋の島々に対してODAを行い、現地の資源搾取や海洋進出への足がかりとしている。また、軍事費を増やし続け、すでに空母を一隻所有し、今後は空母艦隊の創設を目指している。さらに、核ミサイルを開発し、世界に対して脅威を与えている。中国は、自国の国民を豊かにするために資金を使わずに、他国にODAを行ったり、軍備を拡張して、他国を威し続けているのだ。

こうした状況からすれば、当然、日本から中国へのODAは打ち切るべきだ。そして、中国の脅威が迫るアジア地域や南太平洋の島国への支援を行い、地域全体の経済を底上げすることが大切だ。それは、「わが国にとっての安全と繁栄」のみならず、「世界にとっての安全と繁栄」にもつながっていく。(晴)

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