南シナ海では今、スカボロー礁の領有権をめぐって中国とフィリピンが武力衝突に発展しかねない極度の緊張状態を続けている。一方、ミクロネシア・ポリネシア・メラネシアといった太平洋の島々では、米中間で大きな駆け引きが始まっている。

その中で3年に1回、日本が主導する形で開催されてきた「太平洋・島サミット」が、5月25~26日、沖縄県名護市で開催される。

かつて太平洋の島嶼諸国は日本の援助もあって親日意識が高く、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカの3国(ANZUS)も主導的立場にあった。しかし近年は中国がこの地域への影響力を強めている。

例えば、2006年にフィジーで軍事クーデターがあった際、ANZUSは経済的な制裁と入国制限で締め上げたのに対し、中国は巨額の経済援助ですり寄った。

また、パプアニューギニアやソロモン諸島はANZUSに対し反感を強め、バヌアツ共和国とともに連帯組織「メラネシア急先鋒」を立ち上げているが、フィジーもこの組織に参加している。フィジーは、沖縄と同じく太平洋の軍事上要地であり、ハワイとオーストラリアの米軍基地やニュージーランド全島をミサイルの射程に収めることができる。

島嶼諸国を考えるとき、中国と台湾の外交上の争いも考えなければならない。現在でもキリバス、ソロモン諸島、ツバル、ナウル、パラオ、マーシャル諸島の6カ国が台湾と外交関係を結んでいる。一方、中国は「北京政府を中国政府と認める国」(8カ国)に対して財政援助を注ぎ込んでいる。

中国の狙いは二つ。一つは「太平洋を米中で分割し、ハワイから西は中国が管理する」という構想を現実化しようとしていること。もう一つは、海底資源の確保。広大な排他的経済水域は、多様な鉱物資源などが眠っている。

こうした中国の「太平洋進出」に対抗するために「太平洋・島サミット」が開催されているわけだが、今回初めてアメリカが参加する意義は大きい。

サミットでは海洋安全保障についても議論されるという。日米同盟、米豪同盟に島嶼国も加わった「太平洋諸国による同盟」が形成されようとしている。

日本の未来の繁栄は、環太平洋地域の繁栄と重なっている。その意味で日本の未来を決める重要なサミットであると言っていい。(寺)

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2011年1月号記事 日本は中東を超える資源大国

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