東日本大震災の「震災関連死数」が3000人を超えた。「震災関連死数」とは津波や地震などの直接死ではなく、避難生活による体調不良や過労、自殺などの原因で死亡した人の数。

関連死3000人の半分以上は、福島第一原発事故が起きた福島県での犠牲者だ。現時点で1664人に上り、同県の直接死1607人を上回っている。

この関連死数さえも、避難による多大な犠牲の一部でしかない。震災関連死に認定されていなくても、実際はより多くの人たちが、避難の苦を理由に亡くなっている。関連死の認定基準から漏れたことで、訴訟が起きるケースもあるという。たとえ命を落としていなくても、避難指示区域に帰れていない8万1300人の多くが、病気や失業、故郷やコミュニティーの喪失で人生を台無しにした。

ここで問題なのは、左翼的な言論の中に、「原発の罪深さ」を強調するものが多いことだ。避難の犠牲を「原発が生み出した犠牲」と定義すれば、「脱原発」を訴える格好の材料となる。

しかし、そうした捉え方は「そもそも、ここまで大規模で長期間にわたる避難指示が必要だったのか」という重要な問題を無視している。

避難指示区域で観測されている放射線量は、多くの地域で年間20ミリシーベルト以下。年間100ミリシーベルトを超える地域はほとんど無い。

当時の内閣官房主導の作業部会で出た結論では、年間100ミリシーベルトの健康への害は「他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さい」。これは国際的な認識でもあり、国連科学委員会も「100ミリシーベルト以下の放射線の被曝は大した問題ではない」と報告している。

避難指示で発生する多くの犠牲を考えると、避難指示は不要であり、早い段階で撤回すべきだった。これは菅政権の明確な判断ミスであり、避難に関連する震災関連死のほとんどは「避難指示死」と呼ぶべきだ。

「脱原発」を信条としていた菅氏はじめ当時の政権担当者は、冷静な判断ができず、自分たちの思想を“裏付ける"かのように過剰な避難指示を出した。菅直人元首相は自著『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』の中で、「東日本は放射能という見えない敵によって占領されようとしていた。(中略)いつしか私は、原子炉すべてが制御不能に陥り、首都圏を含む東日本の数千万人が避難する最悪の事態をシミュレーションしていた……」とつづっている。

この被害は、「脱原発」の正しさを裏付けるものではなく、むしろ「脱原発」の信条によって生み出されたものだ。

本誌4月号でも指摘したように、安倍政権は民主党政権による避難指示の是非を改めて検証し、避難指示をいち早く解除するべきだ。そうなれば、放射線の恐怖を強調してきた当時の政権担当者、左翼マスコミが「加害者」になり、被害の責任を負わされている東京電力が「被害者」に逆転する。大きな混乱と抵抗を呼ぶだろう。しかしその判断をしなければ、安倍政権は後世から菅政権の共犯者と見なされる。(光)

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幸福の科学出版 『されど光はここにある』 大川隆法著

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