経済財政諮問会議の民間議員が20日、法人税の税率を引き下げたにもかかわらず税収が増えた欧州数カ国の事例を分析した提言を出すことが、17日分かった。

日本の法人税率は35.64%と、30%前後のドイツやフランス、25%の中国と比べると高い。法人税は企業の経済活動を抑制してしまうため、経団連などが法人税率のさらなる引き下げを求めている。

海外では近年、多くの国が法人税率を下げ、逆に税収が増えている。

ドイツでは、経済成長を促して国の経済を安定させるため、効率的な税制への転換を図り、抜本的に税制を改革した。2008年には法人税を9%引き下げて30%にした。このことによって、ドイツ企業の国際競争力が上がり、オランダやアイルランド等の低税率国に移転されていた所得が、再びドイツに戻ってきた。また、2009年からはそれまで累進課税だった金融所得に対する課税を一律25%とする税制を導入した。こうして、ドイツ経済の活性化・安定化が進み、税収が増えたという。

イギリスでは、外国企業を誘致して経済活性化を目指すため、社会保障給付など個人向けの"バラマキ"を削減する一方、法人税の税率を33%から23%に下げた。その結果、年平均の税収は4.8%に伸び、うち4.5%は経済成長によるものだという。イギリスは2014年4月には所得税率をさらに21%に引き下げ、欧米主要国でも最低の法人税率にすることを決定している。

このように、税率を上げれば税収が増えるわけではなく、むしろ減税したほうが税収が上がることのほうが多いようだ。

日本は、今年4月に消費増税を控えているが、本誌で何度も指摘してきたように、消費税増税は税収増につながらない。

実際、内閣府が17日に発表した2013年10月~12月期の実質国内生産(GDP)の一次速報値を見ると、GDPの成長が鈍化していることがわかる。

増税前の駆け込み需要があるため、成長率は年率換算で2~3%を予測する声が多かったが、実際は前期比0.3%、年率換算で1.0%にとどまった。これは、4月からの消費増税に備え、消費が冷え込む「増税のマイナス効果」が早くも起きているためと考えられる。

安倍内閣は、プラスの経済成長が続いているとして、強気の姿勢を崩さない。確かに、アベノミクスの導入以降、景気が少し上向き始め、税収も増えている。ただ、税収が上がったのは、経済成長のためである。4月以降の増税後も同じ成長が維持できるかは分からない。

経済成長こそ、税収アップの答えであることを、改めて知る必要があるだろう。(飯)

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2014年3月号記事 アベノミクスは共産主義化した? (Webバージョン)――編集長コラム

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2014年1月7日付本欄 安倍首相の経済政策は「好循環」ではなく「悪循環」を起こす 年頭会見

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2014年1月2日付本欄 【2014年展望・国内経済編】 「増税不況」を希望に転じられるか

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