日本の「ロボット立国化」への動きが、本格化しつつある。
政府は、次世代ロボットの研究開発を行う企業を、新たな支援制度で助成することを決めた。3日付毎日新聞が報じた。国土交通省と経済産業省は、それぞれ検討会を設置し、公募で選ばれた対象企業の技術評価を行い、助成対象を絞り込む。ロボットの用途として想定されているのは、老朽化する社会インフラの点検診断、災害状況の調査、復旧工事の施工などだ。
またパナソニックが、筋力を機械的にサポートし、重いものを持ち上げる「パワードスーツ」を、世界で初めて量産すると、3日付産経新聞が報じた。販売される製品は「パワーローダーライト」という名称の装着型ロボットで、30キロ程度の重量物を持ち上げられる。災害現場や原子力発電所での利用が見込まれている。
こうした官民のロボット普及化への取り組みには、インフラ整備の現場で「人手不足」や「高齢化」が深刻化しているという背景がある。原発事故や、高速道路のトンネル崩落事故の影響で急増する、社会インフラ整備のニーズに、対応できなくなりつつある。
「人手不足」や「高齢化」は、インフラ整備のみならず、日本社会全体の課題でもある。厚生労働省が1日に発表した、人口動態統計の年間推計によると、2013年は出生数が3年連続で過去最小となった。死亡数から出生数を引いた人口の「自然減少」は、過去最多の約24万人に達している。
この人口減傾向を背景に、「成熟社会」という言葉が多く使われている。これは「労働人口の減少している日本は、もう経済成長できない。GDPの増大とは異なる方向を目指そう」という考え方だ。最近は、「低成長経済、成熟社会として迎える2020年の五輪」といった表現まで散見される。
しかし、こうした成長を諦める「悲観論」には要注意だ。むしろ、「成熟社会」もロボット開発で打ち破るという発想が必要ではないか。
肉体労働や危険な仕事を、主にロボットが担うことができれば、人手不足の解消にもつながる。また、手足が弱って仕事ができない高齢者も、パワードスーツのようなロボットの普及で働くチャンスが生まれてくる。そうすれば、人生で培った知恵や経験を、社会に活かしながら、かくしゃくとして生涯現役人生を送ることができる。
また家庭においても、家事や子守をロボットが担うようになれば、育児のしやすい環境が生まれ、子供も生みやすくなり、人口増加につながる。教育ソフトを内蔵した、教師ロボットが開発される可能性もある。
もちろん、こうしたロボットの普及には、安全性や低コスト生産などの課題はあるだろうが、技術的に不可能ではなく、日本経済の活路になりうる。
同じ人数、体力、知力でも、より生産的な仕事ができる――。先進国になるほど、こうした技術革新が経済成長へ与える影響は大きい。「成熟社会」論で低成長を肯定するのではなく、ロボットの普及など、新しい発想やアイデアで、人口減少を補って余りある生産性の実現を目指すべきだ。(光)
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