「どうしちゃったんですか、小泉さん」と言いたくなる小泉純一郎元首相の「脱原発」発言が収まらない。

16日に千葉県で開かれた講演会でも、「政府は原発ゼロの政策を打ち出すべき」と述べ、「安全が確認された原発から再稼働する」という自民党の方針と正反対の姿勢を示した。

小泉元首相は、脱原発を主張する理由として、「放射性廃棄物の最終処分場がないこと」「代替エネルギーの支援策を打ち出せば技術力の開発が進み、天候に左右されるなどの弱点を克服できる」というおもに2点を挙げている。

しかし、核廃棄物の最終処分に関しては、日本を含む世界各国で地中深くに埋める方法を採用することが決まっており、フィンランドでは建設も始まっている。技術的には解決済みで、残っているのは、どの地域に建設するかという政治的な問題だけだ。

また、代替エネルギーの技術開発は必要だが、現在、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、水力をのぞけば全発電量の1%台にすぎず、これを近い将来主要電源として使うことには無理がある。

ほかにも、火力発電の燃料費が、原発を代替する分だけでも年間3.6兆円かかっていることや、原発技術者の国外流出など、脱原発による悪影響を考えれば、小泉元首相の発言は見識を欠いていると言わざるをえない。

ちなみに、この小泉元首相の迷走が始まったのは、息子の小泉進次郎氏が復興大臣政務官に就任した時期とほぼ一致しており、被災地住民の苦情を聞かなければならない息子への"援護射撃"として、脱原発を主張していると見えなくもない。

いずれにしても、小泉元首相の発言の内容は、左寄りのマスコミが口をそろえて主張している脱原発論に同調しているにすぎない。

本来ならば、国が発展するビジョンを示し、それが困難をともなう場合には、マスコミや国民を説得していくのが政治家の仕事だ。処分場建設地の問題にしても、日本の国としてそれが必要なのだから、政治家が説得して建設を進めなければならない。耳触りのいいことを言えば人気は出るかもしれないが、それでは政治家として役割を果たしているとは言えないばかりか、悪い結果が出れば人気も落ちる。

エネルギー政策は国策であり、失敗すれば国力は衰退し、国が滅びる危険さえある。小泉元首相が本当に息子を応援したいなら、むしろ原発再稼働を地道に説得する役を引き受け、息子の代に日本が繁栄を迎える準備をすべきではないだろうか。(紘)

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