2020年夏のオリンピック開催都市が決まるまで、1カ月を切った。候補地はスペインのマドリード、トルコのイスタンブール、そして、日本の東京だ。開催地が選ばれるのは9月7日。国際オリンピック委員会(IOC)の委員100人の投票で決まる。各都市とも独自の魅力を打ち出す中、「ここまでの接戦は珍しい」と注目が集まっている。
マドリードは、元五輪選手のフェリペ皇太子のスピーチで脚光を浴び、「ロビー活動」の強さが目立つ。イスタンブールは、開催されれば「初のイスラム圏での五輪」というメッセージ性が売り。地理的にも「東西の架け橋」としてアピールできる。
東京は4年前、2016年のオリンピック招致を目指したが、叶わなかった。しかし、今回は勝算がある。「安全」と「確実な開催能力」が評価され、IOC評価委員会も好意的な評価をしている。「東京が最有力」と報じた海外メディアもある。
4年前の最大の課題だった「国内世論の支持」も伸びている。以前は、他の候補地の国内世論支持が70%から90%だったのに対し、東京は59%と最低だった。IOC委員は、本人たちが望んでいないのに東京で開催すべき、とは判断しなかったわけだ。その反省を受け、今回は積極的なPR活動を展開。その甲斐あって、国内支持率は70%を超えている。
一方、日本国内で招致に反対している人も多い。驚くことに、「支持率」を下げる反対運動まで展開されている。読売新聞の調査によると、反対派の多くが「税金の無駄」を指摘。インターネット上のブログなどでは、「無駄」な理由として「経済効果が望めない」「これ以上の開発は要らない」「税金は、他につかうべきところ(福祉や震災復興)があるだろう」「東京への一極集中がよくない」という意見がある。
これらは、共産党や社民党、民主党などが、経済成長政策に反対する時に使う常套句と酷似している。「富の再配分を求める」「経済成長の副作用・犠牲を強調する」という傾向が強く、こうした招致反対運動は、「下山の思想」「左翼思想」とリンクしている。
1964年の東京オリンピックは、日本の高度経済成長のシンボルだ。五輪・東京招致委員会の試算では、2020年の五輪開催で経済効果は約3兆円で、雇用は15万人以上増えるという。ただ、これは「大会関連施設」への投資効果のみ。都市開発や交通網整備、民間の盛り上げなど様々な政策と組み合わせれば、経済効果はさらに拡大するだろう。このチャンスをみすみす逃すなら、「アンチ五輪」は「経済オンチ」と言われても仕方ないのではないか。
さらに、オリンピックのメリットは経済効果にとどまらない。世界各国の人々に、新幹線などの高度なインフラや、おもてなしの心など日本の高い技術力や文化レベルに触れてもらうことで、それを世界にアピールする機会にもなる。また、日本国内に対しても「国際化」を進めるきっかけになる。
「成長を捨て去って、現状維持や停滞を望む」のか、「オリンピックをチャンスととらえて、さらなる繁栄を目指す」か。残り約1カ月、招致へのさらなる盛り上がりが期待される。(光)
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