消費税引き上げの判断の時期が迫る中で、増税が景気に及ぼす影響についての議論が安倍政権の内外で活発になっている。麻生太郎副総理などは引き上げを予定通り行うべきと主張しているが、ブレーンとしてアベノミクスを支えてきた浜田宏一・内閣官房参与らは景気悪化を懸念して増税先送りを提案している。

日銀の異次元緩和でデフレ脱却のお手本を示した日本経済の行方は、海外メディアも注視している。2日付の英フィナンシャル・タイムズ紙では、経済アナリストとして日本経済を四半世紀あまりにわたってウォッチしてきたピーター・タスカ氏が、消費税引き上げの危険性について、次のように警鐘を鳴らしている。

  • 1997年に橋本龍太郎内閣が消費税を引き上げた時、日本経済は10兆円の緊縮財政となった。何かに税金をかければ、税収が下がる。それは日本の消費も然り(If you tax something you end up with less of it. So it was with Japanese consumption.)。数カ月で明らかなデフレが発生し、長期的な低迷に陥った小売業の売り上げは今日まで回復していない。
  • 増税は税収を上げるという本来の目的でも失敗に終わった(The tax rise failed even in its own terms.)。その後の15年間で、中央政府の税収は20%以上も減り、当時たったの40%だったGDP比の債務残高は、150%以上にまで雪だるま式に膨らんだ(snowballed to more than 150%)。
  • 政治家だけではなく、ポピュリズムに走るメディアも「国が破産する」と煽るのが大好きだ(Japan's populist press loves to hyperventilate about the country “going bust")。実際のところ、日本は世界一の債権国である。正しい答えは、緊縮財政ではなく積極財政であり、貯金を減らしてでも消費に回してもらうことである(The right solution is belt-loosening, not belt-tightening; fewer savings and more consumption)。家計の消費に課税するよりも、政府は企業のバランスシートに積み上がった眠っているお金に目をつけ、賃上げと配当アップを促進すべきだ。
  • 15年のデフレから日本経済を救い出すための、正確な公式は誰も知らない。しかし、金融・財政政策が協調すれば、成功の確率はほぼ間違いなく高くなる。安倍氏が目標とする名目3%成長が3年続くまで消費税引き上げを先送りすると決めれば、リフレーションが最優先課題(overriding priority)だという明確なシグナルを送ることになる。

タスカ氏の述べるように、増税で景気が冷え込めば、税収アップという増税の目的さえ達せられない可能性が高い。橋本内閣で学んだ教訓を顧みずに、消費増税で景気の首を絞め、日本経済を再びの長期不況に盲進させる愚行を犯してはならない。

景気回復によって税収に約1.3兆円ものゆとりが生じているのだから、財政再建のためにも、ここで必要なのはさらに強力な景気回復である。日本の家計は1500兆円もの個人資産を持っており、景気回復で企業の収益も好調だ。投資や消費へと向かうお金の流れがさらに活発になれば、「失われた20年」の長いトンネルの出口も見えてくる。

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