政府は9日、2013年版の防衛白書を発表した。日本の安全保障環境は「一層厳しさを増している」とし、尖閣諸島問題で対峙する中国、核開発問題で脅威となっている北朝鮮の動向に、厳しい表現で懸念を示す記述が並んだ。

防衛白書は、自国の安全保障環境に関する認識や、防衛計画の今後の方向性を示すもので、国内外に及ぼす影響は大きい。発表された白書や日本の防衛体制について、大手紙はどう反応しているか。10日付各紙の社説を比べた。

保守に分類される、読売、日経、産経の各紙は、日米同盟を基軸に、抑止力の強化を主張する。

●読売:「中国の『危険行動』を抑止せよ」

「中国の独善的な示威活動は看過できない。日本は、米国などと連携し、国際ルールの順守を中国に促す必要がある。(中略)中国や北朝鮮に危険な軍事行動を自制させるには、緊張緩和に向けた様々な対話による外交努力に加えて、軍事的な抑止力を向上させることが欠かせない」

●日経:「厳しい安保観に見合う防衛を」

「中国による軍備の増強や、北朝鮮の核兵器とミサイルの開発だけみても、当然の認識といえよう。(中略)占拠された島を奪還する能力をもった自衛隊部隊の拡充も急ぐべきだろう。(中略)中国に挑発をやめさせるには、米国と結束し、強い抑止力を保つことが重要だ」

●産経:「国守る決意実行の議論を」

「課題は、こうした決意を防衛政策の転換や防衛力強化に、いかに結びつけるかである。参院選でも各党に論じ合ってほしい。(中略)日米同盟を基軸に防衛力強化の方向性を示したのは当然である。だが、その実効性を高めるためには、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更が不可欠となる」

一方、左翼的と言われる朝日、毎日、東京の各紙は、中国に配慮した慎重な言い回しをしている。

●朝日:「脅威を語るだけでは」

「もちろん、自衛隊が防衛のために必要な備えをすることは不可欠だ。とはいえ、あまりに軍事に偏っては、そのこと自体が緊張を高め、逆に日本の安全を損なう。ここは粘り強い外交努力とあわせた、冷静で、息の長い取り組みが必要だろう」

●毎日:「『安倍カラー』が満載だ」

「防衛力強化は必要だ。だが、それだけでは十分とはいえない。例えば多国間・2国間での安全保障対話や防衛交流を、お互いの信頼醸成や不測の事態を回避するために、もっと進める必要がある。(中略)防衛力強化に前のめりなだけでは、国民の理解は得られない」

●東京:「信頼醸成にも力を注げ」

「想定される脅威に対して必要な防衛力を整備し、訓練を積み重ねることは当然だ。しかし、専守防衛の逸脱との誤解を与えると、地域の軍拡競争を促す『安全保障のジレンマ』に陥りかねない。(中略)一方、防衛力強化や対決姿勢を強めるだけでは、緊張緩和が実現しないのも事実である」

朝日、毎日、東京の3紙は、「防衛力を強化すると、他国を刺激する」と言っているが、その主張は、軍拡を続け、周辺国を侵略・威嚇し続ける中国にこそ言うべきだろう。

参院選の投票日も近づいてきた。国民は、日々、目にする新聞やテレビのミスリードに思考を委ねるのでなく、どの候補者が本当にこの国を、この国の国民を守ってくれる政治家であるかを真剣に考える必要がある。(原)

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