《本記事のポイント》

  • 救急現場での蘇生の中止を提言。助けるのをやめる?
  • 「自宅で穏やかな最期を迎えたい」という希望を想定
  • 大切なのは霊的人生観を持って生きること

日本臨床救急医学会がこのほど、「人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生等のあり方に関する提言」をまとめたと発表した。これまで、終末期における望まない延命治療を中止するためのガイドラインは厚生労働省から発表されているが、救急現場では指針となるものがなかった。

指針は必要だが、懸念されるのは?

提言が出された背景にあるのは、救急現場での「心肺蘇生を望まない傷病者の意思」と「救急活動の原則」との間での、次のようなジレンマだ。

119番通報により、救急隊員が現場に駆けつける。心肺停止状態だが、心肺蘇生を望まないという本人の希望が書かれた「医師の指示書」を、そこで初めて家族から提示される。しかし救急隊員には「救命の原則」がある。切迫した状況で心肺蘇生を中止する判断を迫られる救急隊員。判断の基準となる指針はない――。

提言では、救急隊員は指示書が提示されたとしてもまずは心肺蘇生を行うものとし、その間に傷病者本人の病歴、生活状況、家族との関係等をよく理解している「かかりつけ医」に直接確認が必要であると記されている。「本人とかかりつけ医が想定した状況でなければ、心肺蘇生は続ける」とある。

提言の中では、「心肺蘇生等を望まないのであれば、119 番通報に至らないのが理想」とし、「関係各位の取り組み」や「地域の医療や介護・福祉の関係者等への働きかけが重要」と記された。また、この提言に対し、日本集中治療医学会は、「助かる命を助けないという事態につながらないよう、慎重に対応すべきで、国民全体がこうした意思表示について関心を持ち、考えることが大切だ」(7日付NHK NEWS WEB)との見解を示している。

終末期の治療のあり方について、実際の医学の現場においてはまだ混乱があるようだ。

死はあの世への「旅立ち」

実際の運用に当たっては、医療者も、家族も、難しい判断や、辛い判断を迫られるような状況もあるだろう。ただ、その前提として考えるべきは、人間の「死」のとらえ方である。

「人間の本質は肉体ではなく魂である」という霊的人生観に立って考えれば、肉体的に「死」を迎えることは、この世での人生修行を終えた「魂」が肉体を脱ぎ去り、本来の世界であるあの世へと旅立つということだ。現代医学では、身体ばかりが扱われがちで、ともすれば、魂の中核部分である人間の「心」が軽視されてしまう。

過剰医療で人生の末期に苦しみが続けば、スムーズにあの世へ旅立てなくなってしまう場合もある。「心身の苦しみ」を取り除くという観点から、現代医療の見直しが必要だろう。

(HS政経塾 野村昌央)

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