《本記事のポイント》

  • 北朝鮮の6日のミサイルはこれまでで最も日本に接近したケース。
  • あの4発で関東地方が丸ごと吹き飛ぶ
  • ミサイル迎撃の難しさはアメリカも理解している

北朝鮮のミサイルの脅威が大きくなっている。日本はこのまま指をくわえていていいのだろうか――。

北朝鮮がこのほど、4発のミサイルを同時に打ち上げ、そのうち1発が、石川県の能登半島の北北西約200キロの海域に落下。これまで北朝鮮が発射したミサイルで、最も日本に接近したケースと見られている。

菅義偉・官房長官は9日の記者会見で、今回発射されたミサイルは「スカッドER」と推定していると発表。ミサイルは1000キロトン規模のものであり、「西日本がミサイルの射程範囲に入る」として、「北朝鮮のミサイルは現実の脅威になっている」と強調した。

アメリカの航空宇宙学者ジョン・シリング氏は8日、「スカッドER」について、「現段階では日本や韓国を攻撃する上で北朝鮮が保有する最良の兵器だ」と分析(米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」)。その理由として、北朝鮮が保有する同程度の射程の弾道ミサイルよりも小型かつ安価で、通常のスカッドと同様に移動式発射台から打ち上げられるため、としている。

北朝鮮は今回のミサイル発射について、「在日アメリカ軍基地を攻撃目標として行った」と表明。今月1日から合同軍事演習を行っている米韓両国をけん制する狙いがあるとみられる。

あの4発で関東地方が丸ごと吹き飛ぶ

一方、トランプ米大統領は7日、安倍晋三首相と電話会談を行い、「アメリカは100%、日本を支援する。日本の皆さんには、私とアメリカを100%信じてほしい」と伝えた(7日付英ガーディアン紙)。

北朝鮮の核・ミサイル開発をアメリカの主要な脅威と位置付けるトランプ政権は、金正恩・朝鮮労働党委員長による指導体制の転換、対北軍事行動のほか、核保有国としての認定など、「あらゆる選択肢」を検討しているという。

日本政府は北朝鮮の核・ミサイル開発の進展を受け、弾道ミサイル防衛網の強化を急ぐ方針だ。

元・陸上自衛隊西部方面総監の用田和仁氏は、弊誌の取材に対して、次のようにコメントした。

「誤解を恐れずに言えば、今回の北朝鮮のミサイル発射実験は"大したもの"。あの4つのミサイルの弾の集まり具合を見ると、効果的に着弾させており、被害を及ぼす範囲に関東地方がすっぽり入るというほど命中精度が高くなっている。最悪、核弾頭を積んでいれば、関東地方が吹き飛ぶということです」

平和を叫ぶだけでなく、現実を見据えた防衛体制を

続けて用田氏は、日本のミサイル防衛体制についてこう指摘する。

「1発や2発ならともかく、たくさんのミサイルを一度に打ち込まれたら、日本はどうするつもりでしょう。軍事常識では、1発のミサイルを撃ち落とすには、2発のミサイルを撃たなくてはいけません。あるいは、1発で済んだとしても、高額なミサイルを、果たして必要数、揃えられるかどうかは大いに疑問です。

アメリカですら、ミサイルでミサイルを迎撃することは限界があると理解しており、多数の弾を同時に撃たれたら防ぎ切れないと認識しています。それゆえ、アメリカではミサイル以外の手段、たとえば、レールガンや電磁波などを使って対応しようと努力しています。

実は日本も、ミサイル以外の方法で効果的に対処できる高い基礎的な技術力を持っています。政府は思い切って、そうした分野に資金を投入し、国防力を高める必要があるのではないでしょうか。

防衛費の増額はもちろん、クルージングミサイルや弾道ミサイルを念頭に置いた『限定された攻撃能力』を併せ持つことも検討すべきです。自衛隊の活動を縛る有事法制や憲法によってこの国を守れなくしています。平和を叫ぶだけで国が守れるのか、と言いたい」

現実の脅威には、現実的な対応が必要だ。日本政府に、最悪の場合を想定して、十分な防衛体制を固めることを望みたい。

(小林真由美)

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