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「1対3ではないか」――。共和党候補のドナルド・トランプ氏は、そう不満を口にした。
アメリカ大統領選の候補者による第2回のテレビ討論会が9日(日本時間10日)、ミズーリ州セントルイスで行われた。
冒頭の言葉がトランプ氏の口から出たのは、討論の中盤。民主党候補のヒラリー・クリントン氏のメール問題に関するやり取りの中で、司会者2人がクリントン氏の味方をするように、トランプ氏の発言を制止したためだ。
他の場面でも、「クリントンびいき」が見え隠れした。司会者は、クリントン氏の発言が制限時間を超えてもそのまま話をさせるのに、トランプ氏の時は、すぐに止める。トランプ氏も思わず、「これは面白い」と皮肉を口にするほどだった。
金持ちに対して、減税のトランプ氏、増税のクリントン氏
今回の討論会は、クリントン氏が10年前のトランプ氏の「女性蔑視発言」に対して、トランプ氏がクリントン氏の「メール問題」で激しく応酬。
税制については、トランプ氏が、実業家らしい視点からこう語った。「減税は企業にとって、非常に重要だ。我々は、中間層にも減税する。しかし、クリントン氏は税金を上げるだろう。この国の税金は世界でも最も高いが、私は税率が非常に低い国にする」。
これに対して、クリントン氏は、次のように語っている。「彼(トランプ氏)は、富裕層と大企業に過去最大の減税をするだろう。(中略)そして中間層の税金を増やす。私はアメリカの大半である25万ドル以下の収入の人々に対して、税金を増やすことはない」
支援した者を悪者にするオバマ外交の失敗
また、シリア問題について、クリントン氏は、こう指摘。「アサド政権が地上ではイラン、空爆ではロシアとともに、特にアレッポで野蛮な行為をしている。ロシアはISと戦うのではなく、アサド政権を延命させようとしている」
これを受けて、トランプ氏は、オバマ外交を次のように批判した。
「クリントン氏は、ロシアのプーチン大統領やアサド政権に対しても悪く言う。彼らに反対する人の立場で話す。反逆者がどんな人々かも知らないでだ。イラクだろうとどこであろうとアメリカは反逆者に支援する。人々を武装させる。その結果、ご存知の通り、武装した人々は反抗する対象よりも悪者になってしまう」(参考:10日付日経新聞電子版)
世論調査で63%が「トランプ氏は期待以上」と評価
討論後、米政治専門紙「ザ・ヒル」(Web版)は、「クリントン勝利」という見出しで報じた。討論を観た人の57%がヒラリー勝利、34%がトランプ勝利と回答した世論調査を紹介。しかし、その一方で、63%の人々が「トランプ氏は期待以上だった」と評価していることも伝えた。
確かに、今回の討論全体を眺めると、トランプ氏が押し返してきたイメージがある。
討論の終盤、司会者から、互いの評価できる部分についてコメントするよう促された際、クリントン氏は、トランプ氏の家族を褒めたものの、トランプ氏本人への言及を避けた。
これに対し、トランプ氏は、「ヒラリー氏は、途中で投げ出さない、諦めないファイターだ。多くの問題で判断は全く違うが、素晴らしい資質を持っている」と素直に褒めた。今までワンマンだった実業家のトランプ氏が、「政治家」になる階段を上っているプロセスなのかもしれない。
日本人にとって大事な視点
覇権国家・中国が核ミサイルの照準を日本に合わせている今、米大統領選について、日本人は週刊誌的な話題で一喜一憂すべきではないだろう。日米で協力して「中国封じ込め」を進めるのはどちらか、習近平・国家主席をねじ伏せるだけの「タフさ」があるのはどちらか、という視点が必要だ。
同時に、どちらの候補が大統領になっても、日本として進めるべき国防政策は進めるという肚を固めなければならない。
3回目となる最後の討論会は10月19日、投開票は11月8日に行われる。
(山下格史)
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