2016年8月号記事

2016.11.8 アメリカ大統領選

「トランプ大統領」は怖くない

日本にとって大チャンス!

「トランプが大統領になったらどうしよう」―。

アメリカ国内のみならず日本でも、そんな声が少なくない。

しかし、その発言や考え方などをつぶさに見れば、

日本にとって「トランプ大統領」は

大チャンスであることがわかる。

(編集部 大塚紘子)


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本選はトランプ vs. ヒラリー

前代未聞の"嫌われ者"対決!

11月の本選を控え、共和党は実業家のドナルド・トランプ氏、民主党はヒラリー・クリントン氏が指名候補となることが確実だ。

まずは今後の選挙の流れと、2人が一体どんな人物なのか、特徴を見てみよう。

(編集部 小林真由美)

憎まれっ子、世にはばかるとは、今年の米大統領選のことを言うのかもしれない。

アメリカの二大政党である民主・共和両党の指名候補が、7月末の党大会でそれぞれヒラリー氏とトランプ氏に決まれば、あとは11月8日の投票日に向けて1対1の対決が始まる。実はこの2人、米大手紙の調査によれば、歴代の大統領候補の中で好感度が過去最低。前代未聞の"嫌われ者"対決となっている。

トランプ氏の正直すぎる発言は、本音では同じ考えだった人々の強烈な支持を得ると同時に、反感も買っている。一方のヒラリー氏は筋金入りの政治家。安心して任せられると支持を得る反面、近年高まる強い政治不信の対象でもある。特徴が際立つ分、評価が分かれている。

世論調査では、ヒラリー氏が5・8ポイントリード(注1)。この戦い、最後まで目が離せない。

(注1)6月19日時点。米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティックス」が集計した世論調査より。

民主党

しがらみは多いが政治家経験はピカイチ

ヒラリー・クリントン (68歳)

頭のキレ ★★★

知性派で政策に詳しい。

弁舌さわやかで言うべきことを言う強さも。

稼ぐ力 ★☆☆

多額の政治献金を集めているが、経営能力はなさそう。

経験値 ★★★

国務長官や上院議員を歴任し、ファーストレディを8年間務めた。

緻密さ ★★★

元弁護士だけあって、法令など細かく緻密な仕事は得意。

愛嬌 ☆☆☆

愛嬌があるとすれば、UFO情報公開に前向きな発言をしているところか……。

正直さ ☆☆☆

多数の団体とのしがらみがあり、なかなか本音は言えない。

当選すれば、アメリカ史上初の女性大統領。イラク戦争やアフガニスタンへの派兵に賛成しており、オバマ大統領よりもタカ派。しかし、オバマ氏と同じ民主党でもあり、現在と政策が大きく変わらないことが予想されるため、「他の候補よりも安心できる」「トランプよりまし」という消極的な理由で支持を集めている面もある。

共和党

暴言は批判の的だが経営手腕は本物

ドナルド・トランプ (70歳)

頭のキレ ★★★

不動産業で成功を収めたタフな交渉力や判断力には期待が持てる。

稼ぐ力 ★★★

トランプ・オーガナイゼーションCEOであり、総資産は1兆円以上。

経験値 ★☆☆

政治家経験はゼロ。 大統領に就任したら周りがヒヤヒヤすること必至!?

緻密さ ☆☆☆

翌日に発言を撤回することもしばしば。あまり緻密ではなさそう……。

愛嬌 ★★☆

ガキ大将のようで、やりたい放題でもどこか憎めない。

正直さ ★★★

選挙資金のほとんどは自己出資なので、自由に発言できる。

誰もがジョークだと思っていた候補者だが、共和党の指名候補に。オバマ政権を「弱腰」と批判し、「偉大なアメリカの復活」を掲げる。移民やイスラム教徒に対して差別的な発言を繰り返しているが、不法移民への不満やテロへの恐怖など国民の気持ちを代弁しているため、支持を得ている。所得が低い白人労働者層からの支持が根強い。

次ページからのポイント

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インタビュー/ クライド・プレストウィッツ氏 アメリカの同盟国は安全保障について考え直すべき

日本の核装備は止められない