日本政府が所得税の基礎控除の見直しを検討している。

所得税の基礎控除とは

基礎控除とは、すべての納税者の年収から一律38万円を差し引くことである。差し引いた後の残りの額に税金が課されることになる。だが、一律の金額を差し引くため、低所得者はその恩恵を十分に受けられていないとして、「金持ち優遇」と批判されていた。

見直し案では、低所得者の控除額を拡大し、高所得者は逆に控除額が縮小される。また、女性の年収が103万円を超えない世帯が受ける「配偶者控除」も見直し、年収によらない「夫婦控除」の導入も検討されている。高所得者にとっては控除額が減るため、実質的な増税となりそうだ。

これは、なかなか景気が良くならない中で、政府の税収をあげるための苦肉の策だろう。結局、基礎控除の見直しは、お金持ちからお金をとって低所得者に分配するというバラマキ政策の一環であると考えられる。

平等は本当に幸せなのか?

しかし、累進課税制度のように、ただお金持ちからお金を吸い取ればいいという平等思想では根本的な問題は解決しない。お金持ちから奪い尽くし、お金持ちがいなくなった時点でバラまくことができなくなり、結局は国民全員が貧しくなる。

例えば、働きもせずギャンブルで負けた人たちが貧困に苦しんでいるから、「平等」のために自分が努力して稼いだお金を強制的に渡せと言われたとする。そして、渡された自分のお金が再びギャンブルに使われていたと知ったら、どうだろうか。これは誰であっても抗議をするだろう。

本当に生活がどうにもならない人々へのセーフティーネットは必要だが、原則、自分の人生は、自分や家族で責任を持つべきだろう。

「高所得者=悪人」ではない

高所得者は基本的に努力してお金を稼いだ人であり、お金を効果的に使って財を増やしてきた人である。

景気が低迷している今こそ、こうしたお金の使い方が分かっている高所得者層に、十分に能力を生かしてもらって、経済を拡大させていく必要がある。

例えば、累進課税制度ではなく、一律同じ税率のフラットタックスを取り入れることによって、高所得者に減税をすれば、消費も増え、税収が増えることが考えられる。実際に、ロシアは2001年にこのフラットタックスを取り入れることで企業や個人が正直に申告するようになり、かえって税収が増えたという。

大きな政府による悪平等を広げると、最終的にはみんなで平等に貧しくなるしかない。努力によって道を切り拓くことが尊重され、お金持ちを目指す人を増やすことが、日本の明るい未来につながる。(志)

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