中国の習近平国家主席と、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相が、このほど北京で 会談を行った。ロイターなど各社が報じた。

中国は、資源が豊富なミャンマーとの外交関係を重視しており、習氏は二国間の関係の「正しい方向」への進展を目指したいと語った。

中国とミャンマーの複雑な関係

中国とミャンマーの関係は複雑だ。それを示す一つの例が、ミャンマーのミッソンダム建設計画をめぐる問題である。

ミッソンダム建設計画とは、中国がミャンマーとの関係強化、中国国内の電力不足の補強などを目的として投資を進めていたプロジェクト。完成後は、生産電力の9割が中国に輸出され、残りの1割がミャンマーに無償提供されるという形で進んでいた。

当時、経済制裁下にあったミャンマーにとって、対中関係を強化する上で重要なものとなっていた。

しかし、ダムの建設地に住む少数部族の抵抗や、建設の反対派と当時のスー・チー氏率いる民主化派ら反政府勢力との結びつきなどに押される形で、2011年当時のミャンマーのテイン・セイン政権は、建設を中断・凍結していた。

習氏は、今回の会談後、報道陣の前では、ダム建設計画には触れなかった。だが、中国側は計画の再開を検討しており、2016年3月に成立したスー・チー氏率いる政権のダム建設などを含めた対中関係の問題への対応に注目が集まっている。

両国の動向は、他の東南アジア諸国(ASEAN)にとって、目が離せないものとなりそうだ。

アジア諸国との結びつきを強める中国

中国は一帯一路構想のもと、経済面での支援やインフラ整備などを通してアフリカや東南アジアなど現地の政府を取り込みに入っている。

昨今、取り沙汰されている南シナ海問題においても、日本やフィリピンなどが中国に対抗する考えで一致しているのに対し、カンボジアやラオスといった国々は経済的に抱き込まれている。結果として、7月末のASEAN外相会議では、最大の焦点だった「南シナ海における中国の主張は違法」とする仲裁裁判所の判決は、共同声明に盛り込めなかった。

スー・チー氏は当初、民主化をすすめる立場から中国の独裁体制に反対の姿勢を示していた。しかし、新政権樹立の際、ミャンマー国内の経済界への配慮もあり、中国に歩み寄る傾向を見せており、これまで習氏のほか、李克強首相、王毅外相らとの会談を重ねている。

ミャンマーが中国との関係を深めていけば、東南アジアにおける中国の影響はさらに強まっていくだろう。

着々とASEAN諸国との結びつきを強める中国に対抗するため、日本やフィリピンは、アジアのリーダー的存在として、アメリカを巻き込みながら、東南アジアをまとめ上げる必要がある。(祐)

【関連記事】

2016年3月11日付本欄 スー・チー氏の側近が大統領に就任か 民主化の陰に迫る中国

http://the-liberty.com/article.php?item_id=11044

2016年5月18日付本欄 ASEANも「中国怖い」 期待される日本の介入

http://the-liberty.com/article.php?item_id=11338

2016年8月13日付本欄 日比が会談「法の支配重視」で一致 日本は包囲網の中心たれ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=11774